明石 高岡の家

『青森ヒバとタイル張り浴室のある団地断熱リノベーション』兵庫県明石市

竣工: 2013/08

設計監理: 小谷和也 池田郁夫

写真撮影: 小谷和也

RC壁式構造

1977年築

99.02㎡

現在住んでいる賃貸公団の近くで団地を購入しようと思っています、とMさんからメールでご相談を頂いたのは2012年の秋のこと。その後購入が決まり、年末に私達も同行で見学させて頂きました。

階段室型の5階建ての団地、もともとは階段を挟んで各階2戸ずつだった団地を繋げて、ワンフロア一戸に改修されたという非常に珍しいニコイチ物件。もともと二戸だったため鏡に写したような間取り、バルコニーがあった部分を渡り廊下として、トイレや玄関も2箇所あり、既存の浴室だった部分は片方を洗濯室として使われていました。

壁はほとんど無断熱、また4面全て外壁なのはもちろん、内包している階段室も外部なので6面外壁があるような状態。また窓は渡り廊下の全面開口も含め山のようにあり、このまま住むとかなり寒いだろうことは容易に想像できました。

浴室は在来工法のタイル貼り、また配管経路も非常に限定されている上に、壁式構造なので間取りの変更もかなり難しい・・・唯一救われていたのは住戸が全て二重床になっていたため床下空間がたっぷりあったことで、そのため乾式二重床を施工しても床高を上げずにプランをすることができそうだったことです。

Mさんへのご提案は、壁に全て断熱材を施工、内窓もペアガラスで設置しつつ、さらにハニカム断熱ブラインドも設けて断熱性能の向上を図ることを最優先課題としました。遮音性能の確保のための乾式二重床はもちろんのこと、壁も全て珪藻土塗りとして性能と快適性の向上を図っています。

分散していた水回りを片側の住戸に集中。二個あったトイレもひとつは収納として活用。玄関もひとつは断熱パネルで塞げるようにして温熱環境の向上を図りました。細切れになっていた間取りは抜ける壁を極力撤去、オープンに繋げるようにして壁式構造ながら開放感のあるプランとしています。

壁一面に縦張りで設けたスギの壁、キッチン家電を納めたカウンターを持つ造作キッチン、本棚のある廊下やヒバ材を使い防水からやり変えたタイル貼りのお風呂など、団地リノベでは類をみない性能を兼ねそなえた木の家となっています。

<after>ヒバを使った在来浴室にスギ板壁のあるシンプルな木の団地リノベーション

<before>玄関もトイレも2つ、ワンフロア一戸のニコイチ団地は無断熱で過酷な環境だった