西昆陽の家

尼崎T邸マンションリノベーション

『斜め壁の浴室ボックスのある珪藻土壁のリノベーション』

竣工: 2010/11
設計監理: 小谷和也 池田郁夫
写真撮影: 小谷和也
RCラーメン構造
1999年築
90.71㎡

Tさんは2010年3月にホームページより資料請求を頂いたのち、4月に現場を見させて頂きながらご相談をお受けしました。尼崎市の北部、もうほとんど伊丹市といっていいところ、周りには畑などもあるのどかな環境に建つ築11年、90平米のマンション。V字棟の接点にあるため住戸は5角形という複雑な形状ながら、窓やバルコニーを多数持つポテンシャルの高い住戸。

始めは子供部屋の分割をしたい、というのがメインのご相談でしたがよくよくお話を伺うと、変わった形状の上に水周りが中心にあること、収納の形状や量が少ないため収納量が足りないこと、奥さんの在宅ワークのスペースがないことなど悩みはたくさん持たれていて、ご夫婦でも色々プランを考えておられるようでした。また部分改修では床の段差が避けられず、またキッチンなどに痛みが出ていたことなども気に掛かりました。

築浅物件の上、きれいにお住まいだったため、全面改装が今必要なのかどうかは非常に判断の難しいところです。ただ小規模なリフォームでも全面改装でも、長い目で見たコストパフォーマンス、工事に掛かる労力などを見て総合的に考えることが重要。そこでまず、居室やスペースの確保、水周り位置の配置と動線などを含め、この住戸をもっとも使いやすく、快適に、有効に活用できるプランを全面改装でご提案し、それを見た上でご判断頂くこととしました。

まずネックとなっていた住戸中央の洗面と浴室を、リビングの一角に大幅に移動。キッチン勝手口だった部分を洗面からアクセスできるように、リビングにあった小窓を浴室の窓として活かせるようにしました。同時にキッチンを住戸の中央に配置し、動線の要衝とすることで家全体に人と風が廻れる動線を確保。子供室は共通のWCLを間に挟み平等に分割、寝室の一角にワークスペースを設けつつ、リビングとの間にもう一つのWCLとパントリーを設け、収納量の大幅な増加を図りました。

また車イスが必要なご主人のため、もともと広かった玄関ホールの一部にシューズクロークと山桜材を使ったベンチ、ヒノキ八角柱の手すりを設け、廊下の一部を本棚廊下としています。また玄関と勝手口にあったアルミ製網戸を撤去し、木製の引き戸で網戸を作りました。
モザイクタイルとシナ合板、ステンレスカウンターのキッチンは大工造作の手作り、浴室ボックスの櫛引き仕上げをはじめ、住戸全体の壁は珪藻土塗り仕上げとし、一部施主セルフ仕上げとして、珪藻土とスギ床、無垢山桜やタイルなど、自然素材を使い分けながら動線や収納量を確保できるプランとして考えました。

当初悩まれていたTさん。私たちがご提案したプランをご覧頂き大変喜ばれ、即決、全面改装に至ったわけですが、結果的に猛暑の夏場に仮住まいへの引越しや住戸の複雑さゆえの工期延長などで大変なご迷惑をお掛けすることになってしまいました。

それでもお引渡しのときに『工事が終わると思うと寂しい』『リノベーションを検討されている方がいたらいつでも連れて来て下さい』というありがたいお声を頂き、また大工さんも交えて新年会にお呼び頂いたり、その後の見学会にも欠かさずご参加頂いたりと、家族ぐるみでお付き合いさせて頂いているのが私たちもとても嬉しく、スタッフや工務店さん、職人一同とても感謝しています。今後とも末永くお付き合いをよろしくお願い致します。

<after>水周りの大胆移動で人と風の動線と家族のコミュニケーションを確保

<before>築11年、5角形の特殊な形状で使い勝手はよくないマンション