伊丹の家Ⅰ

伊丹O邸マンションリノベーション

『畳スペースと杉ベンチの2つの床のある珪藻土の家』
竣工: 2011/08
設計監理: 小谷和也 池田郁夫
写真撮影: 小谷和也
RCラーメン構造
1988年築
84.45㎡

Oさんとの出会いはホームページからのお問い合わせがきっかけ。『今住んでいるマンションのリフォームをしたい』『木を使った住まい』『友人や同僚が集まれる家』『趣味の備前焼コレクションがしまえる収納』というご要望。早速物件を見せて頂きました。JR伊丹の駅の目と鼻の先、下階に商業施設を持つ伊丹市でも人気の築23年、85平米弱のマンション。

せっかく角部屋であるにも関わらず、細かく間仕切りされた部屋は暗く、断熱不足のため壁のいたるところにカビの発生が見受けられました。このカビはOさんがリフォームを考えられる一つのきっかけだったそうで、私たちの過去の断熱改修の事例を見つけて頂いたそうです。迷わずスケルトン解体からの断熱改修と内窓の設置をご提案しました。

全体の構成としては水周りの位置はほとんど変えず、玄関横の洋室を玄関収納やウォークインクローゼットとして収納量を確保。水周りの他は全てLDKとして、一部を小上がりの畳スペースの寝室スペースとするワンルームプランとして考えました。特に畳スペースからダイニングに掛けては35センチ上げたもう一つの床高さを設定、壁沿いに繋げていきながら、天井高さを座った視線に合わせて抑えることで人が集まれる落ち着いたダイニングスペースを提案しました。

またOさんは数年前にご主人を病気で亡くされ、お一人でのお住まい。間取りの関係でご主人の仏壇はリビングに隣接した和室に西向きに置かざるを得ない状況でした。そこで南向きに置けるスペースを作ることをご提案したところOさんもそれがストレスだったそうでとても喜んで頂けました。

小上がり畳スペースは奥半分は作り付け、手前の6ブロックは家具として設え、移動ができるように。これは法事などの際に仏壇前に移動させることで畳ベンチとしても使えるように考えました。畳スペースは寝室でもありながら、来客時は天井高を抑えた個室スペースのような気持ちのいい空間になっています。

その他、壁全面の珪藻土塗り、山桜の無垢板を使ったキッチンカウンターや洗面カウンター、シナ共芯合板とステンレス1ミリ厚カウンターを使った大工造作キッチン、モザイクタイルを組み合わせたトイレや洗面など、長持ちする素材を使いながらシンプルな構成としています。

お引渡し後に早速宴席を設けて頂き、スタッフはじめ家族や大工さんとお邪魔させて頂きました。美味しい料理もさることながら、天井高さを控え重心を抑えた木の空間で頂くお酒はとても美味しかったです。取材等にも全面的にご協力頂いて頭が上がりません・・・今後とも長いお付き合いをよろしくお願いいたします。

<after>スケルトン解体から全面断熱改修、皆が集える2つの床のあるLDK

<before>築23年、断熱不足で結露やカビが発生していた角部屋の物件