木のマンションリフォーム・リノベーション-マスタープラン一級建築士事務所(大阪/兵庫/西宮/神戸/芦屋/宝塚/東京/神奈川/埼玉)

終の住処リノベーションのポイント (プランニング編)


浦和の家。将来的な間取り変更を考え小上がり、ソファ、テレビボードなど全て置き家具で構成している。

さて、ここではマンションを終の住処にリノベーションするにあたり、間取りやプランニングの面から色々と考えていきたいと思います。

[年代によってかわる家族構成]

宝塚I邸。典型的な2部屋の子供室への入り口。

さて、私も10年ほど掛けて80件を超えるリノベーションをお手伝いしてきました。リノベーションを始めた当初は私も30代はじめ、クライアントも同じ年代の方が大半でした。
で、私が歳を重ねるに連れて、クライアントの年齢も上がっていき、その折々にプランニングで抱える問題も移り変わっていくんだな、ということを痛感しています。

特に年代によってプランニングの変化を感じるのが子供部屋です。若いうちは子供も小さい、もしくはこれから生まれる、なんていう方も多く、今は子供部屋は要らないが、将来的に分けられるようにする、というプランがほとんどでした。
ところがある時点から、子供が大学に入って遠方に行く可能性が、とか、子供が就職したのでそろそろ出ていってもらいたいんだけど・・・という種類のお話が増えてきました。

どちらも家族構成が変わるという点では共通なのですが、前者は将来的に部屋を増やす必要が、後者は部屋を減らす必要があり、正反対の要望となってきます。
小さかった子供が小学校高学年になり個室が要るようになり、その十数年後には要らなくなる、ということですね。

で、若い頃はそこまでしか想像できなかったんですが、私も歳を重ねるうち、もう一歩先を想像するようになりました。
子供たちが独立。結婚、里帰りで長期滞在したり、なんていう時期はもちろんですが、その先には、自分たちの両親の介護をどうするか、同居するのか、という大きな問題が待ち構えます。

私も両親を見ていてそれを実感するようになってきました・・・

で、例えば同居したとして、その両親が住まなくなったあと、自分たちがシニアと言われる世代で夫婦ふたりになったときにどうするのか。
寝室は夫婦別室がいいとか、それぞれ趣味室が欲しいとか・・・なんて話になるわけです。

さらにもう一歩行っちゃうと、自分たちも住めなくなる歳になったときに、この物件をどうするのか。
子供たちが相続するとしたら、子供たちが住みやすい間取りがいいのか、それとも売りやすい間取りのほうがいいのか・・・

もちろん、どこまで考えたとしてもキリがないし、未来のことは分かりません。
ただ一つ言えるのは、終の住処にする以上、そこで暮らす数十年の間に、家族構成は結構頻繁に変わる、ということです。

まぁ、10年ぐらい住めたらそれでいいか、という気持ちで行うリフォームと、ここにずっと住むと決めて、終の住処として考えるリノベーション。
この頻繁に変わる家族構成に対する対策をどこまで考えるか。これこそが分水嶺といってもいいのかもしれません。

[リノベーション一回で済ますか?、リフォームを数回していくのか?]

スケルトンからのリノベーションは大事業。なるべく将来を見据えておきたい。

さて、では話を少し変えて、建築行為という側面からこの問題を考えてみます。

若い世代のリノベーションでは、これから子供が大きくなった際に、大空間のリビングに壁を作って分けて行く、というものが一番多いわけですが、これは新しく足して行く行為なので、工事としては比較的簡単にできます。

ところが、また10年後にその壁を壊すとなると、作るよりもう少し手間と費用、日数が掛かってきます。解体の手間、さらに壁をなくした床や壁、天井の補修など、工事内容が多岐に渡るためです。
つまりちょっとしたリフォーム工事になってしまうんですね。
で、また部屋を分けるために壁を作る、なんてことになると、また手間が掛かる・・・ここをどう考えるのかが最近の私の悩めるところです・・・

なんといっても、スケルトン状態からのリノベーションは大事業です。できればなるべく先のことまで見据えた設計をしたいな、という思いはあります。
もうひとつ、できるなら将来的にもうリフォーム工事はしないでも済むようにこちらで計画しておきたい、と考えだすとなかなか悩ましい・・・

20代や30代のクライアントにとって、終の棲家というのはなかなか想像しがたいし、10年後には違う家に引っ越しているかもだし、そのときにまだまだ次の家を考えるエネルギーも財力もあると思うんです。

でも今40代、50代の方が、次の家族構成の変化にあたるのが20年後くらいと考えると60~70代。
老後のことを考えるとあまりお金も使いたくないし、何より家のこと考えたり、仮住まいに引っ越したりというのは体力的にしんどいはず。

なので、なるべく今のうちに大掛かりなことは済ませておきたいし、将来的な間取り変更は簡易にできるようにしておくのがいいかな、というのが今の所の私の考えです。

[将来的な間取り変更に対応できるプランニングとは]

浦和の家。成人した娘さん二人の部屋は家具で間仕切。将来的に移動できる。

で、いろいろ悩んだあげく、最近私がよくおすすめしているのが、置き家具を使って間取りを作る可動式プランです。
多いのが、今は家族が多いので部屋数が要るけれども将来的に要らなくなる、というパターンで、例えばお子さんがもう成人しているご家庭とか、ご両親との同居を考えられている場合です。

大きな空間を作っておき、そこに家具を並べて壁にすることで各個室を作っていくことになります。

可動家具はその場に合わせて製作。棚にするのか、クローゼットにするのか、本棚にするのかは現在の状況に合わせることもできるし、将来的なことを想定しておくこともできます。
ただ置くだけでは地震時の転倒などの危険性があるので、家具同士はビスで緊結し、さらに杉床に対してもしっかり固定しておきます。

将来的に家具を動かして間取りを変更する際には、大工さんに来てもらってビスを外し、家具を移動、新しい場所でまたビスで固定するだけで済むので、大工さん以外の職人さんを呼ぶ必要もなく、半日ほどで作業は終わります。
杉床にビス穴が空きますが、簡単な補修で直せますし、日焼けの跡もしばらくすれば消えていきます。

もちろん、ただ壁を作るのに比べ、可動家具の製作は手間がかかりますのでイニシャルコストは上がります。ただ将来的なリフォームは必要ないこと、移動もすぐ終わることを考えると、経済力と体力のある若いうちに面倒なことは終わらせておき、将来はラクできるわけです。

また家具は最後に作成して設置するため、リノベーション工事中は細かく間仕切るプランに比べ大空間を確保できるので、大工さんの作業スペースが確保しやすいというメリットもあります。

[可動家具でのプランニングでの注意点]

で、いいことずくめな感じの可動家具間仕切プランですが、何点か問題点があります。順に見ていきましょう。

●エアコンをどう考えるか

浦和の家。引戸上部の欄間はエアコンの冷気導入口。開閉することで調整する。

これは可動家具プランだけに限定したことではないですが、特に細かく部屋を分けた場合、各部屋のエアコンをどうするかは大きな問題です。

大抵エアコンは窓際にしか設けられないため、住戸中心部に近い個室の場合は冷房などが届きにくくなります。かといってマルチエアコン(室外機1台で2台の室内機を動かせる特殊なエアコン)やエアコン配管を伸ばすことで複数台のエアコンをつけるのもあまり得策とはいえないし・・・

まぁ、マンションは空間があまり大きくないので、リビングなどに大きな容量のエアコンを設置し、扉を開けっ放しにして住戸全体を冷やす、という方法でもそこまで問題はないかもですが、その場合でもできれば断熱性能は上げておくことをおすすめします。

※ちなみに今、一台のエアコンで住戸全体の空調を賄ってしまう、というシステムを試行錯誤しているところです。これについてはまだテスト段階なのでもう少ししたらご紹介できるかと思います。

●照明をどう考えるか

浦和の家。照明はダクトレールとして、リモコン付きLED電球でオンオフする。

使う季節の限定されるエアコンにくらべ、照明は毎日使うものなので、エアコンよりも重要な問題です。例えば今3部屋に分けているけれど、将来的に2部屋にしたいという場合、照明器具の位置やスイッチの位置を今どうしておくのがよいのか、というのは非常に悩ましいです。

これに関しては、照明は基本ダクトレール型にしておけば照明器具の位置や個数、向きなどはあとで自在に変更することができますが、器具そのものをオン・オフするスイッチ位置は変えられないのがネックになります。

この解決策としては、LED電球とそれを操作できるリモコンにいいものがいろいろ出てきているので、これをうまく組み合わせるようにしています。
特にIKEAのスマート電球はスマートスピーカーとも連動するのでおすすめです。調光や調色もできるスグレモノ。これについてもまたそのうち詳しくご紹介します。

●入り口やプライバシー確保をどう考えるか

中目黒の家。子供室とWCLを家具で仕切る。扉は開き戸として家具側に固定。

可動家具で間仕切をする場合、部屋数が変わるということは入り口の数も変わるということで、入り口をどう考えるかは結構重要なポイント。例えば家具で間仕切る大空間は何枚かの引戸で開閉できるようにしておくと、部屋数が変わっても入り口はフレキシブルに対応できます。もしくは家具に対して引戸やドアを固定してしまうという手もあります。

あと、家具で間仕切る場合、壁でしっかり間仕切るのに比べ相互の部屋の音や明かりは抜けやすくなります。隙間をパッキンなどで詰めて気密性を上げたりはできますが、それでも効果は限定的です。これはいかんともしがたいところがあるので、プライバシーをどうしても確保したい場合は間に収納を挟むなどの工夫が必要になります。

[○LDKという縛りからの脱却は資産価値も高める?]

どこまで将来を見据えるのかは判断が難しいところ。

さて、終の棲家としてのリノベーションをプランニングから考える、ということでいろいろ見てきました。
何十年というスパンでライフサイクルを見る眼差しが大事になってくるわけですが、可変性をもたせる、ということは、実は自分たち家族だけでなく他の家族にとってもメリットが大きいのです。

例えば、ここに死ぬまで住もう、と決心してリノベーションを行ったとしても、止むに止まれぬ都合でどうしても売らなければいけないということも出てくる可能性だってあります。
その場合、可動家具で間仕切りしておけば、次に住もうとしている家族のライフスタイルに合わせて簡易に間取りを変えることができるわけです。

どんなに設計や素材にこだわったリノベーションをしたマンションでも、いざ売る段になると、その他大勢の中古マンションと同列に見られてしまうのが現在の不動産流通市場です。
マンションを探す人たちにとっては、部屋がいくつあるのか、2LDKなのか3LDKなのかで物件を探すことになるわけです。これは仕方ありません。

ところが、可変性のあるプランにしておけばその要望にリフォームなしでフレキシブルに合わせることができるので、売りやすさはかなり変わってくると私は思います。

特にこだわった家ほど、要望を優先しすぎてかなり変わったプランになることが多いです。それはきっとクライアントにとっては理想の住まいですが、一般的に求められる万人受けするプランからは離れていく傾向があることは否めません。
いわゆる売主のクセの強いプランになればなるほど、そこにジャストフィットする買主は相対的に減っていくのは致し方ない現実なんです・・・

無垢の素材や塗り壁で作ったリノベーションは、適正な使い方さえすれば素材の寿命はいつまでも保ちます。数十年後、自分たちが住めなくなって子どもたちの持ち物になったとき、そのまま住み継いでもらうにしても売却するにしても、そのままうまく使ってもらえればありがたいなぁ、というのは設計者としての驕りなのかもしれませんが、せめて負の遺産になることだけは無いように考えたいなぁ、とは思っています。


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