マンションの玄関網戸は木製引戸でつくる

マンションの玄関網戸は木製引戸でつくる

尼崎T邸。玄関に設けた引戸の造作網戸を室外からみる。

マンション住まいの方で、玄関にアルミの折戸網戸を付けられている方は非常に多いと思います。

本来マンションは南北に窓があり、風が通りやすい建物なのですが、大抵は細かく部屋が区切られているため、玄関ドアを開けないと風が通らない場合が多いです。逆に、玄関を開けてやればかなりの通風が期待できる、ということですが、アルミの折戸網戸は見た目が今ひとつですし、冬は邪魔になります。

そこで、リノベーションの際に玄関網戸を引戸で作ってしまう、ということをご提案することがあります。物件によって採用しやすい、しにくい場合があり、また既成品に比べデメリットもありますが、春、夏、秋となるべく自然の風を活かしながら生活したい、という方には根強い人気があります。

ここでは設置形状ごとに事例をご紹介しつつ、造作網戸のメリットやデメリットについても解説していきます。

 

引込みスペースがある場合の造作網戸(アウトセットタイプ)

引込みスペースがある場合の造作網戸(アウトセットタイプ) 引込みスペースがある場合の造作網戸(アウトセットタイプ)

尼崎T邸。玄関と洗面の勝手口に設けたアウトセット引戸タイプの造作網戸。視線がないので格子は荒め。 尼崎T邸。玄関と洗面の勝手口に設けたアウトセット引戸タイプの造作網戸。視線がないので格子は荒め。

尼崎T邸。玄関と洗面の勝手口に設けたアウトセット引戸タイプの造作網戸。視線がないので格子は荒め。

網戸を引戸で作るためには、玄関ドア横に引戸をしまえるだけのスペースが必要になります。そういったスペースが十分ある場合、最も簡単に網戸を引戸で設置できます。

写真は上が玄関の網戸、下は洗面所の勝手口に設けた網戸です。壁の室内側を引戸が動く(アウトセット)形状となります。ただ、ほとんどのマンションでは玄関横にこういったスペースがあることが少ない、もしくは間取り上どうしても収納や壁が来ることがあり、アウトセットはオーソドックスな形状でありながらレアなケースといえます。

 

引込みスペースがある場合の造作網戸(引込戸タイプ)

伊丹O邸。壁と玄関収納の間に引き込まれる造作網戸。廊下を通る人が多いので格子は細かめにした。 伊丹O邸。壁と玄関収納の間に引き込まれる造作網戸。廊下を通る人が多いので格子は細かめにした。

伊丹O邸。壁と玄関収納の間に引き込まれる造作網戸。廊下を通る人が多いので格子は細かめにした。

マンションの玄関まわりはとかく間取りが細かくなりがち。玄関横に壁はあるものの、壁や家具などを取りたい、特に靴の収納を、ということが多くなります。こういう場合は網戸を壁の中に収納できるようにする引込戸タイプとすることで解決できます。

この事例では玄関収納の側板と外壁のスキマに網戸が収納できるようにしてみました。

 

茨木M邸。こちらも玄関収納と外壁の間にすっぽり納まる玄関網戸。視線は少ないのでかなり荒めの格子。 茨木M邸。こちらも玄関収納と外壁の間にすっぽり納まる玄関網戸。視線は少ないのでかなり荒めの格子。

茨木M邸。こちらも玄関収納と外壁の間にすっぽり納まる玄関網戸。視線は少ないのでかなり荒めの格子。

こちらも収納と外壁の間に網戸を納めるようにした事例です。引込みタイプは冬の網戸を使わない時期には完全にしまっておけるので非常に便利です。もちろん、引込みの壁の中にホコリなどが溜まるため、たまに掃除する必要はありますが、玄関に設ける網戸としては一番優れている形式だと思います。

 

引込みスペースのない場合の造作網戸(アウトセットタイプ)

引込みスペースのない場合の造作網戸(アウトセットタイプ) 引込みスペースのない場合の造作網戸(アウトセットタイプ)

西宮K邸。柱型があるため室内にセットバックさせて設けた造作網戸。ミラー引戸は網戸の框に当てて閉める。 西宮K邸。柱型があるため室内にセットバックさせて設けた造作網戸。ミラー引戸は網戸の框に当てて閉める。

西宮K邸。柱型があるため室内にセットバックさせて設けた造作網戸。ミラー引戸は網戸の框に当てて閉める。

さて、ここまではあくまで玄関ドア横に引戸をしまえるスペースがある場合の事例でしたが、実際は窓があったり、壁が凹凸していたりしてドアのすぐ内側に引戸を設けるのが難しいケースが多いです。こういう場合、引戸を少し室内側に入れることで半外部の空間を作り、網戸を付けることで対応できる場合があります。

こちらは玄関ドア横にコンクリートの柱があり、そのままでは引戸の設置が難しかったため、玄関ドアの50センチほど内側に網戸をアウトセットで設けた事例です。玄関ドアと網戸の間の空間にはスペースを活かした収納を設けています。網戸を閉めると外部になる空間なので、外物置と割りきって使う収納として設けています。

 

引込みスペースのない場合の造作網戸(引込みタイプ)

引込みスペースのない場合の造作網戸(引込みタイプ) 引込みスペースのない場合の造作網戸(引込みタイプ)

三田F邸。玄関ドアから1000ミリほどセットバックした位置に設けた引込みの造作網戸。 三田F邸。玄関ドアから1000ミリほどセットバックした位置に設けた引込みの造作網戸。

三田F邸。玄関ドアから1000ミリほどセットバックした位置に設けた引込みの造作網戸。

こちらは引戸の設置スペースがない上に、家具も設けたい、という場合の最も難易度の高い事例。片側は廊下、もう片方はメーターボックスの出っ張りがあり引戸設置が難しかったため、約1メーターほど室内側、玄関框のラインに網戸を設置。これは収納側、メーターボックスとユニットバスの間に引き込まれるように考えてみました。

先ほどの事例と同じく、網戸を閉めた際、外部となる部分は大きくなりますが、頑張れば網戸は付けられる、という特徴的な事例だと思います。

 

木製網戸のデメリットとメリット

いろいろ事例ご紹介しましたが、木製網戸には既成品のアルミ網戸にはないデメリットがいくつか存在します。

●視線がどうしても抜ける

アルミ製の網戸では、板状の薄い素材でルーバーを形成できますので、視線は全く通さず、風のみ通す、といったことが可能ですが、木製網戸では完全に視線を塞ぐことは構造上難しいです。なので、近隣の方の往来が激しい共用廊下に面している玄関の場合は採用はかなり難しいです。

ちなみに視線を抜けにくくする防虫ネットを使っても、廊下が暗く室内が明るい場合はほとんど意味をなさないことになります。

●防犯面での弱さ

上のデメリットに少し近いですが、アルミで面格子のようにガチガチに作れる網戸と違い、木製網戸は強度は低くく、鍵を設けたとしても強い力で押せば壊すことはできます。もちろんそんなことをする方はいないと思いますが、万が一のことを考えると特に夜間は不安に思われる方もおられると思います。

とはいえ、開け閉めが簡単、邪魔にならない、というのは引戸でも設ける木製網戸の大きなメリットです。角部屋など自宅に来る用のある人しか玄関前に来ないという物件の場合、かなり効果を発揮します。全ての物件にお勧めできるものではないですが、ハマる物件には非常に便利な通風装置です。

来客時に引戸を開けてお出迎え、というのはまるで料亭のような趣きもあります。なるべく通風を活かして生活したい、という方にはぜひお勧めします。