マンションの床材の歴史について

リノベーションに関するお問い合わせで『マンションに無垢の床を使えると初めて知りました』といったお声をよく頂きます。

もちろん無垢の床は流行でもあり、マンションでも使えることはほとんどの方がご存知だと思いますが、マンションと無垢フローリングの間には色々な問題が付きまとって来ます。そのあたりについて、マンション床材の歴史も交えてお伝えしたいと思います。

 

 

↑某大手建材メーカーさんホームページより引用

新築マンションでフローリングといえば、合板の遮音フローリングが多いですね。踏むとフニャフニャするあの床です。

合板遮音フローリングは建材メーカーが苦心の上生み出した発明品で、ここ数十年、技術的にはほとんど変わっていません。その開発のウラには集合住宅床材の進化の歴史があります。

 

↑URの向ヶ丘第一団地ストック再生実証試験見学時に見せてもらった公団住宅内部。
廊下は無垢板張り、居室は畳敷き(写真は下地の杉板が見えています)

そもそも、住宅公団(現UR)が戦後の住宅不足解消のためRC造の団地を作り始めた当初、床はタタミ敷き、台所と廊下は板敷きでした。中は真壁造りで木造住宅そのもの、床板も無垢の板でした(無垢しかなかったですから・・・)

 

↑左は神戸灘区H邸、1978年築、右は神戸灘区N邸、1974年築。双方ともカーペット敷き。

その後、裕福な暮らしの象徴としてカーペットが使われるようになります。築30年前後の家に伺うとカーペット率は非常に高いです。
表面が柔らかいカーペットは、軽量音(物を落としたりという軽い音)を消してくれるので、集合住宅が増え、問題になり始めていた騒音問題も同時に解決してくれたわけです。

ところが、次はダニの問題が出てきます。時代的にも掃除のしにくいカーペットよりフローリング張りを好む人が増えてきた。しかしフローリングにはカーペットのような遮音性はない。
そこでカーペットのような遮音性を持ったフローリングの開発が急務となりました。で、生まれたのがフニャフニャフローリング、という訳です。

このフニャフローリング、遮音性能は本当に優れていることが計測してみるとよく分かります。 ポイントは表面が柔らかいということ。物を落としても、当たった瞬間に変形してショックを吸収することで、音の発生源自体を小さくしてしまうのです。まさにカーペットの性質そのものなんですね。

ところが、この魔法の床材もシックハウスという副産物を生み出します。もちろん、現在使われているものは化学物質の放散量が小さく制限されてはいます。が、ゼロではない。

そして、基材がベニア、表面に薄い木の層(もしくは木目プリントされた紙)が貼ってあるだけのため、表面が傷つくとすぐにダメになるという欠点もあります。 そこで、最近は無垢フローリングが再び脚光を浴びて来ているというわけです。