マスタープラン/小谷和也設計室のホームページにお越し頂きありがとうございます。代表の小谷和也です。
当事務所は、建築設計事務所としては珍しく、中古マンションのリフォーム、リノベーションに特化した設計監理業務を行っています。
奈良県の吉野杉の床材や珪藻土、漆喰などの塗り壁材といった自然素材を使い、 引戸や障子といった和の装置を大事にしながら、生活動線、通風や断熱、結露の解消など、住み心地を最大化する設計を基本ルールとしています。
私はそれを『木のマンションリノベーション』と呼んでいます。
まずはじめに
さて、私は2009年からマンションリノベーションに特化した設計を始めました。
当初はこれから物件を購入してリノベーションを考える若い方がほとんどでしたが、いつしか住み慣れたマンションをスケルトンリノベーションして、快適な住まい、終の棲家にしたいというご依頼が増えてきました。
現在当事務所にご相談いただく方の8割近くが『今住んでいるマンションのリノベーション』です。その理由は、マンションそのものやリノベーションという言葉が抱える問題と密接に関係しています。
それらマンションが抱える問題をいくつか紹介しながら、木のマンションリノベーションに関しても詳しくご説明していきます。
新築マンションの間取りがみな同じ理由
2005年から人口の減少が始まった日本。膨大な住宅ストックもある中で家余りが叫ばれて久しいですが、いまだ新築マンションは建ち続けて広告チラシが入らない日がないくらい。
その広告を見ると新築マンションの間取りはどの会社のものもそんなに変わりません。これは会社の違いだけでなくもう数十年間、間取りはずっと変わっていません。
よくある南北に長い中住戸でいえば、北側に玄関、両隣に腰窓のある洋室2つ、廊下の両側にトイレや水回り、突き当りのドアを開けると床暖房の表示があるリビングダイニングに対面キッチンに襖で繋がった和室。
私が今までリノベーションさせて頂いた家も、6割方こういう間取りです。
で、長年マンションに住まれた方によくあるのが・・・
- クローゼットや和室の押入れでは収納量が足りず、北側洋室のうち暗くて変形している方に収納ボックスやハンガーラックを置いて納戸として使いはじめ、数年後に子供部屋として使う段になって物の多さに唖然とする・・・
- なるべく風を通して生活したいが南北の窓を開けても通らないので、玄関にアルミ網戸を付けたら廊下ばかり風が通り洋室は抜けず、さらにリビングの開きドアが強風でバタバタ動いて丁番が壊れる・・・etc
相談いただく方が抱えられている悩みって驚くほど共通しています。
新築マンションにとっては建築基準法などの法規制をクリアしつつ、万人受けする間取りを提供する必要があるので仕方ない部分はありますが、家族の数だけあるライフスタイルに対して、判で押したような新築マンションの間取りが対応しきれなくなっているのを痛感しています。
新築マンションの断熱性が上がらない理由
もうひとつ、新築マンションが長年抱える問題が住戸の断熱性です。
最近でこそペアガラスが入ったマンションが増えてきましたが、それでも空気層が薄いビル用サッシがほとんど、アルミ部分は非断熱のサッシがほぼ100%。
戸建てでは近年どんどんと開口部の断熱性が上がっていますが、高層で風が強いマンションでは耐風圧の関係で窓サッシの断熱性を上げるにはコストがかなり上がるため、もう10年以上断熱性能は足踏みを続けています。
にも関わらずバルコニー側の開口部は近年どんどん大型化しているのが現状です。
また合板塗装のピカピカしたフローリングはただでさえ足触りが冷たいのに、巨大化する開口部からの冷気でさらに冷やされるため、ガス温水床暖房がなければ冬は素足で生活するのは難しい。
本来水漏れが起これば下階に迷惑を掛けるマンションに床暖房は不向きですが、新築マンションのチラシでは床暖房が付いているのが当たり前なものと皆刷り込まれています。
また、少し古い物件では壁の断熱材が薄く性能が低いため、壁で結露やカビが発生、居住者の悩みとなっていることも多いです。
窓に至っては冬になれば結露でビショビショ、放っておくとカーテンなどにカビが生えるので、毎朝結露拭きから一日が始まる、という方も多いのではないでしょうか。
マンションに天然素材・自然素材・無垢の木材が使われない理由
新築マンションを見学にいくと、床は合板のフローリング、ドアやキッチンはシート貼り、壁や天井はビニールクロスでピカピカに仕上がっています。それぞれの物件の違いといえば色が濃いとか薄いとか、そんな差でしかありません。
どうしてマンションで無垢材や天然素材が使われないかというと、傷が付いたり汚れたりといったクレームを避けるため、というのが最も大きな理由です。
特に大きなハウスメーカーやデベロッパーは年間に大量の住宅を供給しますので、クレームを少しでも減らしたいのは正直なところです。
これは建築を作る側の身勝手な論理と思われがちですが、傷が付きにくくて汚れにくい素材が開発されてきた背景には消費者のニーズがあったことも否定できません。
確かに新建材の合板フローリングは当初はきれいですが、そのうち傷が付き始めます。10年も使うと表面の塗装がはがれ、下地の合板が見えたりして、そのまま使うことは難しくなります。
もうひとつ、無垢材を扱うには職人さん、特に大工さんの技量や経験がものをいいます。
新建材は組み立てが簡単なので、のこぎりと接着剤があれば誰でも施工できてしまいます。効率化を図ることが全て悪とは言いませんが、失われたものも多いと思っています。
日本でのマンション(集合住宅)の歴史を紐解いてみると、近年上陸ツアーが話題になった軍艦島にあるのが日本最古の鉄筋コンクリート集合住宅で、大正5年の完成、すでに築100年を超えています。
塩分の多い海風に晒され、30年以上も手入れもされずに倒壊していません。コンクリートの寿命や耐久性を証明する生きた標本と言えます。
この軍艦島ですが、写真でみてみるとバルコニーの手すりや窓サッシは全て木材でできています。ヒノキの無垢材です。
また住戸内部も和室に真壁という昔ながらの作りになっています。また公団の古い団地も同じように無垢材と大工さんの手作業で作られていました。
現在の新築マンションで使われているような新建材はまだない時代、大工さんが苦労しながら作っていたのだろうな、と考えると感慨深いものがあります。
木の内装の効能や林業や環境についての問題ももちろんですが「マンションはコンクリートの箱。せめて内装は自然なものを使いたい」と私は考えます。
マンション黎明期や初期の公団住宅の内装に無垢材が使われていたように、マンションリノベーションに木材を使うことは、少し昔の姿に戻してやるだけとも言えるはずで、既製品で組み合わされた新築マンションにはない大工の腕の見せ所もでき、それは木を扱う技術の伝承にもつながると考えています。
マンションリノベーションで失敗しないために
さて、ここまでマンションの抱える問題についてお話しました。判で押したような同じ間取りに低い断熱性能に新建材。
今住んでいるマンションをリノベーションしたい、という方の動機がこれらを元にしていることが多いのは事実ですが、もう一つ考えたいのはリノベーション市場の現状です。
リノベーションという言葉がすっかり定着してきた昨今、今まで住んできたマンションを快適に直したいと考えて『マンションリノベーション』という言葉で検索して情報収集されると思いますが、実際に検索して出てきたイメージはどうでしょうか。
例えば天井や壁の解体したコンクリートをむき出しにしたり、床をコンクリートにしてしまっているような、快適性が高くなさそうに感じる事例が多いことに気づかれると思います。
現在リノベーション市場は若い世代が中心。特に賃貸住まいから中古マンションを購入してリノベーション、という流れが多いわけですが、始めて不動産を取得する若い人たちにはまだマンション特有の問題点が見えていないので、快適性まで意識が回りません。
なのでデザイン重視、快適性軽視の事例がこれだけ多いのは仕方のないことなのかもしれません。
2009年よりマンションリノベーションの設計監理に特化して活動をしてきた中で、様々な問題にぶつかりました。
例えば無垢材を床に使う場合の、下の階への騒音対策はどうすればいいのか。実際に研究機関に通い性能測定を繰り返しながら試行錯誤してきました。
またカビや結露を確実に止めるために、断熱材メーカーと温度測定やテスト施工を行ったり、現在はエアコン一台での全室空調システムの開発や大学とのデータ計測などを行いながら知見を重ねています。
もう10年ほどそういった活動を行って分かったことは、マンションリノベーション業界はいかに売るか、が先行してしまっており、遮音にしても断熱にしても、研究開発がほとんど行われておらず、また知識を発信、共有してくれる機関もない、ということです。
その背景には、音や断熱は耐震や防火のように命に直接関わらないから軽視されているということ、区分所有という取り扱いの難しいマンションに法規制がしにくいことも一因として考えられると思います。
2011年からは『一般社団法人 住宅医協会』のマンションリフォーム講師として、全国の工務店・設計事務所・リフォーム業者に向けて、試験期間から得たデータなどをフィードバックしつつ、正しいリフォームの方法や注意点を広める活動を毎年行ってきましたが、結露やカビなどを防ぐ断熱改修、無垢材を床に使う際の遮音性能に関してはほとんどの業者が知識不足であることを痛感しています。
木のマンションリノベーションについて
マンションリフォームやリノベーションをお考えの方に私が提唱する『木のマンションリノベーション』について簡単にご説明いたします。
▼床材や天井材には無垢材を使用します
床材については、国産材の代表格である『杉(すぎ・スギ)』の無垢材を使います。天井にも杉を使うこともありますし、ヒノキを使うこともあります。
▼壁や天井には珪藻土などの塗り壁を使用します
壁や天井の仕上げには漆喰(しっくい)や珪藻土(けいそうど)などの塗り壁や珪藻土クロスなどの素材を使います。ただ合板(ベニア)やポリカーボネート、アクリルなどの材料を全面否定しているわけではなく、それぞれ適材適所に活用します。
▼北欧家具の似合うシンプルで素朴な設計を行います
リノベーションのイメージについては設計実例をご覧下さい。基本的には無駄に飾りのないシンプルなデザインを得意としています。
高級ホテルのようなラグジュアリーな家、南欧風やカントリー風、雑貨屋さんのような、といったご依頼はお断りしています。
個性の強い杉材の特徴をうまく活かし、木の家特有の田舎くささを出さないよう、また畳や障子を取り入れながらも和に寄り過ぎない設計を心がけています。
▼今のお住まいの不満や悩みを改善する仕掛けやからくり、アイデアを一緒に考えます
今住んでいるマンションのリノベーションを希望される方には、必ず動機となる不満点があります。老朽化を更新するだけ、デザインを変えるだけではただのリフォームであり、リノベーションとは呼べないと考えています。
特に終の棲家としてリノベーションをお考えの方には数年後のプラン変更まで見据えた提案をしています。
まずは現在のお住まいの不満点や悩みをヒアリングし、例えば室内物干しや収納できる建具、収納量の確保のほか採光や通風、動線や使い勝手に至るまで、様々な設計的工夫で解決してきました。楽しみながら一緒に考えていきたいと思っています。
▼カビ・結露対策としての断熱改修や空調計画を考えます
マンションでのカビや結露で悩まれている方は非常に多いですが、根本的な対策としては必ず断熱改修が必要になります。
具体的には壁や天井に断熱材を吹き付け、窓サッシには内窓のほか、断熱ブラインドや障子を設けます。
また最近はエアコン一台で家全体の冷暖房をまかなう全室空調のシステムを考案、採用しています。
▼引戸や障子などの日本の先人の知恵を活かします
マンションでは開きドアが一般的ですが、風を通したい時など邪魔になることが多く、日本人のライフスタイルには合っていません。
なので基本的な建具は全て引戸、もしくは引き込み戸として考えるようにしています。また窓面には全て引き込める障子を設けることが多いです。
▼三次元CADを使ったBIM設計でプランを考えます
プランニングの際にはコンピューターグラフィックで作成した完成イメージや、アプリで実際に建物の中をウォークスルーできるシステムを使いながらご提案しています。
平面的になりやすく、模型などではイメージが掴みにくいマンションにおいて、質感やボリュームなど、イメージをしっかりお伝えできるように配慮しています。
サイトに色々な情報を載せていますのでお役立てください
マンションリノベーションをお考えの方はまずサイトをじっくり読まれることをお勧めします。プランニングに素材、断熱のほか色々なコンテンツを載せていますので、実際にリノベーションされる際、どこの会社のどんなリノベーションの場合でもお役立て頂けると思います。
当事務所へのご依頼を考えられた方には分かりやすい資料をご用意しておりますので、下のページより専用フォームから必要事項を入力してお申込みくださいませ。よろしくおねがいいたします。