デザイナー:ハンス・J・ウェグナー(1953)
メーカー:ゲタマ
↑GETAMA(ゲタマ社)は1899年にマットレス工場として創業。創業地の地名Gedsted と、当時マットレスの中身が海藻(Tang)だったことから、Gedsted TangMattress の頭文字から取った社名
Yチェアでお馴染みのハンス・J・ウェグナーデザイン、GETAMA( ゲタマ社) の「GE290」。彼のデザインしたソファの代表格で、ヴィンテージ市場でも売れ線の商品です。一人掛け用から三人掛け用までバリエーションがあり、背もたれが高いハイバック仕様もあります。
ウェグナーは椅子やテーブル、ソファなどの家具から、照明やゴミ箱などの小物まで幅広く手掛け、さまざまな会社で製造・販売されています。すごいのは、彼はすべての会社に訪れ、工房や職人と接して強みに合わせた家具をデザインしたと言われていること。たとえば、Yチェアは木材の機械加工が得意なカール・ハンセン&サンのために、そして「GE290」はクッション製作に力を入れているゲタマ社のためにデザインされました。
↑座面下のコイルスプリングが特徴。現行品はメッシュになっている
この椅子の魅力は大きく2つ。まずはなんといってもその座り心地のよさ。座面はスプリングの入ったクッションに加え、その下にコイルスプリングを重ねるという贅沢仕様のため、腰掛けるととろけるような柔らかさ。私も初めて座ったとき、ほかのソファとの座り心地と明らかな違いに驚いた記憶があります。これは一度座って体感しないと分かりません!
↑座面に傾斜を付けるとお尻が動かず足先が上がり、安楽性が高まる。傾斜した座面を後ろ脚へつなぐことで、この構成を自然に生みだしているところが名作たる所以。建築家にもファンが多い
もう一つはデザインの構造的な美しさ。横から見ると座面を支える材が流れるようにそのまま後脚になっていき、“人”にも“Y”にも見えます。家具職人でもあったウェグナーらしい構造とデザインが両立した構成です。「GE290」は1953年、Yチェアの3年後にデザインされていますが、70年近くも前に木材フレームのソファの原型を決めてしまったといっても過言ではないくらい現在のソファに影響を与えています。
ちなみに、日本ではソファというと最低二人掛け以上の大きなものをリビングにどーんと置く、というイメージが強いですが、広い家ではまだしも、コンパクトなリビングでは面積的に難しい。シングルやDINKSの方には、「GE290」のような一人掛けソファを人数分置くスタイルをお薦めすることが増えています。
唯一にして最大の欠点は価格です。現行品は年々高くなっていますし、納期も長い。ヴィンテージのほうが手に入りやすいかもしれません。ヴィンテージだとオークのほかに、レアですがチークのものも流通しています。
柔らかな座り心地、直線的で男らしい洗練されたデザイン、このソファはまさにお父さんの椅子にぴったりです。できれば小さなサイドテーブルにアルネ・ヤコブセンのスタンドなんか置いて、ウイスキーをロックで嗜みつつ読書なんかしてもらったら完璧です。そんなステレオタイプなお父さん見たことないけど……(笑)。
リビングでテレビ観賞の用途で使う場合は、ハイバック仕様にして「GE290」のオットマンを付けるべき。ただし、一瞬で寝てしまう可能性があるのでご注意を。でもこのソファならオヤジのうたた寝も絵になるかも(笑)