↑東大阪の家。土間側からハーフユニットバスと繋がった洗面、その先のダイニングキッチンをみる。
マンションリノベーションを考えられる方が持っている不満のうち、浴室に関わるものは結構多いです。その不満を見ていくと、掃除がしにくいといったものよりも、『圧迫感がある』『狭い』『換気が悪い』『暗い』というものが割と多いような気がします。で、この不満たち、よくよく考えてみると、開放感や明るさ、風通しを確保したい、という裏の欲求を表すものがメインで、つまり窓があれば解決してしまうものが多かったりします。
スケルトン状態からのリノベーションでは、排水や換気の経路さえ取れれば、浴室の位置を動かすことはそんなに難しくありません。ただ浴室に窓を取る、となると、一般的な既成品のユニットバスではサイズや納まりなどにかなり制限があります。また外部の窓面に近づけると、上部の梁が低い場合、既成品ユニットでは天井高さや換気扇のスペースが取れずに設置できないケースも多いです。
そこで浴室に窓を、という場合に採用することが多いのが『ハーフユニットバス』というお風呂です。ここではこのハーフユニットバスに関して少しご紹介しつつ、事例や注意点にも触れていきます。
ハーフユニットバスとは?
↑TOTO ハーフバス08。TOTOホームページより。
ハーフユニットバスとは読んで字のごとく、半分のユニットバスという意味でして、下半分だけのユニットバスになります。各メーカー色々な商品がありますが、あまり力を入れていないメーカーが多く、現在のところはTOTOさんの出されているハーフバス08という商品が最も新しくデザインもよいのでこれを使うことが多いです。
下半分のみが防水や排水の仕組みが工場で作られたものになるので防水的に安心なのと、壁や天井、ドアや水栓など全て自由に作成できるため、窓や開口のとり方、天井の作りなど自由にできるためにプランの柔軟性がとても高まります。マンションの管理規約では防水やメンテナンス性の観点からユニットバスの使用が必須ですが、ハーフユニットバスならその条件をクリアしつつかなりプランの工夫をすることができます。
では早速、事例をいくつかみていきましょう。
事例その1:木材で壁や天井を仕上げて温泉のようなお風呂に
↑豊中の家。室内側に設けた窓から木のお風呂をみる。天井は勾配天井として浴槽側に下げてある。
壁や天井を自由に作れる、というメリットを生かして全て木材を貼って仕上げると、さながら温泉のような浴室になります。ただやはり木材はカビなどが生えやすいので、あまり水を掛けすぎたりしないよう気を使ってやる必要はあります。しかし木の香りに包まれての入浴はやはり気持ちいいものです。特に浴槽側の天井高さをグッと押えてやると居心地がより高まります。
事例その2:タイル+木材ですっきりさせつつ温かい木のお風呂に
↑中目黒の家。天井は杉材、壁は200角タイルで仕上げている。洗面との間仕切りには強化ガラスを入れて開放感を確保。
こちらは壁はタイル、天井は木材で仕上げた場合です。壁面の手入れはかなりラクになるため、最近はこの仕様を選択されるケースが結構多いです。タイルのサイズを大きめにすれば目地も減るのでより掃除がラクになります。
事例その3:なるべく開放的にして広さを感じさせる
↑東大阪の家。腰までをタイル、天井はヒバ材。壁面はほとんどを強化ガラスとして、扉も強化ガラスで仕上げることで大きく視界の抜ける開放的な浴室。
こちらは壁をタイル、天井を木材にして、さらに壁面はなるべくガラス張りとすることで開放感を出した事例です。こうすることで洗面から見たときの浴室、浴室から見たときの洗面を視覚的に取り込めるので広く感じられるようになります。
↑刈谷の家。もともと洋室だった空間の中央に浴室、周りの壁面に洗面を設け、ガラスだけで区切った開放的なプラン。
こちらは部屋の中心に浴室を配置した事例です。面積に余裕がないとできないプランですが、開放感はひとしおです。ただガラスを多くすればするほど拭き掃除の面積は増えますので、掃除好きな方にしか提案しませんけど・・・汗
事例その4:思いっきり窓から外の景色をたのしめる眺望風呂
↑ポートアイランドの家。23階の窓辺に浴室を設置。壁や天井は杉板で仕上げている。浴槽上部は壁際の梁を隠すために天井を下げてある。
壁や天井を自由に作れるというメリットを最大限に活かせば、元々は個室の窓だった部分をお風呂のためだけに使う、といったことも可能です。この事例では地上23階、隣棟との距離もかなりあったので、神戸の夜景や海が見える窓の横にお風呂を持ってきています。角部屋で外部からの視線が気にならない窓があったればこそ、の眺望風呂といえます。
ハーフユニットバスのデメリット
さてここまでハーフユニットバスを事例を交えて説明してきました。正直いいところばかりご紹介してきましたが、もちろんデメリットも結構あります・・・
まず第一のデメリットはコストが高くなることです。通常の既成品のユニットバスって、浴槽や床はもちろん、壁、天井、水栓、シャワー、照明、ドア、換気扇など全てセットになっていて、現場で組み立てるだけで完成します。
で、一方のハーフユニットバスですが、既成品に含まれるのは浴槽と床だけ、です。にも関わらず、この時点でコストはほぼ同じくらい掛かります・・・床と浴槽しかないのになんで?と思うんですが、ハーフバスはほぼ一体成型になっていて、受注生産、つまり注文を受けてから一つずつ作る仕様になっていて、しかも工場でもかなり手作業が入るオーダー品に近いものなので、在庫してある部品を組み合わせて作るユニットバスと比べてどうしても高くなるんですね。
床と浴槽しかないにも関わらず、ほぼ同じコストが掛かってしまう上に、壁も天井も大工さんが下地から作る必要があります。入り口の扉も枠は大工さん、建具は建具屋さん、水栓もシャワーも別で選び、照明も換気扇も別途必要です。となると、どうしてもコストは上がっていくのが分かって頂けるでしょうか・・・
今までの統計だと、普通のユニットバスに比べ、ハーフユニットバスにすると仕様にもよりますが80~100万円くらいは高くなります。
もうひとつのデメリットとしては、サイズがかなり限定されるため、間取りがうまく入らない可能性が高くなります。普通のユニットバスサイズのバリエーションは各メーカー色々取り揃えていて、小さいものだと1216サイズ(浴室の内寸が1200ミリ×1600ミリという意味です)から、1316、1418、1620etc・・・もっと細かいサイズまで取り揃えているものもあります。
が、ハーフユニットだと、先ほど紹介したTOTOのハーフバスでも、1616か1620の2種類しか選べません。色も白しかないし・・・特に南北に細長いことの多いマンションのプランニングでは、長方形のユニットバスのほうが間取りがうまく入る、ということが結構あるので、これは大きなネックです。
最後に、壁やドアとの取り合い部分などの防水上の工夫が必要です。普通のユニットバスに比べると一体成型で床と壁に継ぎ目がない分、モノ自体の防水性は高いと言えますが、造作していく部分はこちらで防水の仕組みを考える必要があるので、経験がないとなかなか怖いところがあります・・・そういう手間の掛かる部分がまたコストを引き上げる、ということにも繋がってくるわけです。
とはいえ、毎日入るお風呂、特に閉鎖的なお風呂が多いマンションで、温泉のような木のお風呂や開放的な眺望風呂にできるメリットは大きいです。例えコストが上がったとしても、毎日の気持ちよさから得られるものってプライスレスだと思うんです。
もちろん誰にでもお勧めできるものではありませんが、今までお風呂が嫌いだった人が、ハーフユニットで開放的になった途端に長風呂になった、とか、掃除が苦手だった人が、木のお風呂にしたら毎日手入れするのが習慣になった、とかいう話はよくあって、プランが住まい手に与える影響力というものを改めて感じたりします。
まぁ、結局のところ、私がこういうお風呂が好きなので色々考えちゃうだけなのかも知れないんですけどね・・・お風呂にこだわりたいという方、ぜひご参考まで。