住吉の家Ⅰ

『永く使えるものと長く暮らす無垢の家』神戸市東灘区

竣工: 2009/05

設計監理: 小谷和也 池田郁夫

写真撮影: 小谷和也

RCラーメン構造

1999年築

67.48㎡

2009年のはじめ、ホームページからお問い合わせを頂き、物件見学に向かったのは1月のなかば。国道2号線沿い、JR住吉駅徒歩数分という便利さ。それでも道路に面していないため静かで、北側には六甲の山並みを見ることができる、築10年の70平米弱の住まい。

保健師をされているお母さんと歯科医を目指すお子さんという家族構成に、ファミリータイプのマンションリノベーションはとても贅沢な空間を取れる。細かく区切られていた部屋をまとめ、こじんまりしていた水まわりを大きく、とお二人の要望は極めてシンプルなものだった。

居室として無理やり分けられていたものを繋げ、洗面スペースを2倍近い面積まで拡張。リビングは寝室も兼ねさせる大きな一室空間として、開放感を持たせた。各室に新たに大きなクローゼットを設け、それぞれのものがそれぞれしまえるように考えた。

築10年はまだまだ新しい。物件を見に行った際にそれを痛感するも、この時代の物件になると、素材、例えば壁紙やフローリングや窓枠など、全て張り物の新建材でできている。こういった新建材は最初はピカピカ、掃除もしやすい。しかしそのうち剥がれ、ボロボロになって、古ぼけていく。

そこで、床には全て無垢杉フローリング、水まわりにはサーモタイル、壁・天井には珪藻土クロス、窓枠も全て杉材に取替え、自然素材に包まれた空間を目指した。木は年を経るごとに飴色に変化しながら磨かれ、艶を増していく。古ぼけるのではなく、『古美て』いく、傷や凹みが味となり歴史となっていく、白と杉のコントラストがすっきりとした木の住まいとなった。

<after>杉の茶、珪藻土の白、建具も壁と同化させたシンプルモダンな木の家

<before>70平米弱、居間+和室の典型的な3LDK、築10年の中古マンション。