マンション住戸位置による温熱環境の違い

貝塚の家、広大なルーフバルコニー付きの最上階物件。

マンションリフォームで断熱を考えるときに重要な要素が『住戸の位置』による環境の違いです。

最上階や1階住戸、角部屋は周りを囲まれている住戸に比べると夏暑く、冬寒いというのは体感的には分かります。

ではそれを数字で表してみよう、ということで熱損失係数(Q値)という建物の断熱性能を示す数字を使って、住戸位置によってどの程度の差があるのか、早速見てみましょう。

最上階?角部屋?家の位置で暑さ寒さはこんなに違う

話を分かりやすくするために上のようなモデル住戸を想定します。右下の四角は3階建て12戸のマンションを南側から見た図です。

前提条件として隣戸への熱損失はないものとして考えると、外気に面する面が多いほど熱が逃げやすい(入りやすい)ことになるので、1番の住戸が最も熱損失が少なく、①中間住戸<②角部屋<③最上階・一階<④最上階・1階角部屋の順で熱の逃げる量が多くなっていきます。

無断熱+シングルガラスの場合のQ値(熱損失係数)

ではそれぞれの熱の逃げやすさを数字でみてみます。まずは壁や天井などに断熱をせず、窓サッシも既存のアルミサッシとシングルガラスの場合です。熱損失係数は数字が大きいほど熱が逃げる、と考えてください。

断熱材がない状態では、①住戸は3.20なのに対し、最上階角部屋では9.18と2.87倍にもなります。

実際、今回のモデル住戸は南北にしか窓を取っていませんが、角部屋では西や東にも窓があることが多いので、もっと大きな差になることが多いです。つまり中間住戸に比べ、最上階・1階角部屋は3倍以上熱が逃げやすいわけです。

40mm厚の断熱+窓に樹脂内窓(ペアガラス)を設置した場合のQ値

では壁や天井に4センチの断熱をして、ペアガラスの内窓を設けた場合をみてみます。全体的に数値が下がっているのが分かります。

①住戸で41%、④住戸では25%まで熱損失が減りますので、その分冷暖房に掛かるエネルギーが少なくなるわけです。

熱損失が大きな住戸ほど魅力的

さて、このデータでお伝えしたいのは、中間住戸の方が絶対にお勧めということではありません。

むしろ熱損失が大きな住戸、たとえば最上階ならルーフバルコニーがあったりするし、角部屋なら窓が多いし、1階住戸は庭や専用駐車場が付いてたりと、思わず選びたくなる面白い物件ほど温熱環境は劣悪になりやすい、ということなんです。

なのでマンションを選ぶ際にも、魅力的な住戸ほど熱損失も大きいから、快適に暮らしたいなら断熱も考えておこうね、ということ。どんな素敵な内装にしても、寒くて暑いとストレスは大きいし、光熱費も高くなっちゃうのです。

またいくら断熱に気を付けたとしても、最上階は夏は暑くなりやすく、一階は冬が寒くなりがちです。暑さや寒さが苦手で温熱環境を何より大事にしたい、という理由で中間住戸を選ぶ、という選択肢もありなわけで、ここはそれぞれの求めるものによって変わってくる、ということを理解して頂ければと思います。