新築マンションに床暖房が付いている理由

どんどん大型化するリビング側の窓サッシ

最近の新築マンションといえば、リビングやダイニングに必ず床暖房が設置されています。チラシの間取りをみると、リビングとダイニングに必ずオレンジの床暖房区画が表示されています。

マンションといえば床暖房というくらい定番になっていますが、それはなぜなのか?を考えたことのある方は案外少ないかもしれません。

そもそも戸建てよりかなり暖かい(はずの)マンションに、大掛かりな暖房設備である床暖房が必ず付いている理由を考えてみましょう。

床暖房は決してエコではない

床暖房についてどんなイメージをお持ちでしょうか?空気は汚さないし、床面からあっためるので暖房器具としては優れているんですが、コストパフォーマンスはあまり良くないのです。

イニシャルコストも高いし、ランニングコストも高い。熱効率もよくない。人によっては、ガス代が高いので使ってない、という方もおられるようです。

床暖房のメリットの一つは、温風暖房ではないので温度ムラがなくなることです。

例えば、戸建てで吹き抜けがあるリビングなどでは、エアコンや石油ストーブでは熱風がそのまま上にあがり、吹き抜け上部に集まってしまい、1階がいつまで経っても温まらないということがあるため、床暖房が有利といわれています。

ではなぜ吹き抜けもないマンションに床暖房セットが当たり前になっているのか?最近は戸建てでもそんなに使われているわけではないし、コストも高い。

ここには大人の事情(デベロッパーさんとガス会社さんとの関係性とか・・・)もあるかも知れませんが、実は設計的な問題でもあると思っています。

断熱性能が低いまま大型化する窓サッシ

築年数が新しい物件ほど窓が大きいが断熱性は低いまま

マンションの間取りを見ると、南側にリビングダイニングがあって、そこに大型の開口を設けていることが多いです。新築マンションほど窓が大きくなっていっています。もちろん眺望を良くしたいんでしょうが、大きなガラス窓に断熱の工夫はあまりありません。

新築マンションでは最近やっとペアガラスが普通に使われるようになったけれど、空気層は6ミリの薄い仕様だし、アルミの枠や桟は無断熱がほとんど。急速に断熱性能が高まっている戸建て住宅の窓に比べ、マンション窓の性能は20年ぐらい古いなぁ、といつも感じます。

戸建てより高所に使われるマンションの窓サッシは耐風性能を要求されるため、強度にかかわる断熱性を上げるのが難しいとしても、あまりに性能が低いまま、というのが現状です。

窓面の面積は年々大きくなるのに断熱性能が上がらない状況で、冬にリビングで何が起こるかを考えてみると、大きなガラス面で冷やされた空気は重くなって下に流れ、床に沿って室内を流れます。この気流をドラフトと呼びますが、非常に不快です。

特に部屋の中央でストーブなどをつけた場合、暖気は天井に上がり、窓のところで冷やされて下がる、というローテーションを繰り返します。そのため足元が冷えて、頭が暖かいという状況になります。まず、このドラフト防止のために床暖房を採用している、というのが理由の一つめ。

ただでさえ冷たいのにさらに冷やされるフローリング

大型化する窓に冷たい合板フローリングの組み合わせ

もう一つは、合板フローリングの冷たさです。

冷気によってただでさえ冷たい合板フローリングはより冷やされ、素足ではとても歩けないような状態になるので、必ずスリッパが必要になってきます。

なので結局、冷たい床をホットカーペットのように床暖房で暖めてしまおう、ということになるんですよね・・・

要は窓面の断熱不足と、床材そもそもの冷たさが問題なわけなので、そこを解決しないとエネルギーの無駄使い感が半端ないわけです。なんというか、本末転倒な感じがしてしまいます。

窓の断熱と床材を変えれば床暖房は要らないはず

ということで少し考えるとこの矛盾に気づかれると思うんですが、窓に内窓や断熱ブラインドなどを付けて断熱補強して、床材を冬でも冷たく感じにくい杉材を使うことで、床暖房はそもそも要らなくなります。

床暖房としてほとんどのマンションで使われている温水式は、給湯器で温めた温水を樹脂の管で通しているのですが、樹脂はそもそも断熱性能が高いため熱が伝わりにくいんです。

そのため、求める床暖房の温度よりもさらに高温のお湯を通す必要があり、非常にエネルギーロスが大きいです。
裏面から下の階にも熱が逃げるので、この分もロスになります(その分上からもらえますが・・・)

また、配管に水を通す構造である以上、いくら長寿命の管を使っているとはいえ、劣化や施工ミスによる水漏れ、という可能性はゼロにはなりませんし、その際に被害を受けるのは床暖房を使う当人ではなく下の階の方なんですよね。そういう意味でもリスクが高い設備ではあります。

窓面の断熱強化と冷たく感じにくい床を使うだけでかなり改善できる

省エネが叫ばれている昨今ですが、だったらガスは使い放題、というわけではないですよね。有限の化石燃料に違いないわけです。

いつ無くなるか分からないし、電気が高くなればガスも高くなるだろうことは安易に想像できます・・・寒いから暖める、ではなく、まずは寒くなる、感じる要素を取り除いてやる。私としては、床暖房がなくても生活できるように設計面で考えることが一番の省エネではないかと思います。