一昔前は中古マンション購入を住宅ローン、リフォーム費用はリフォームローン、という考え方だったものが、最近は双方を一本の住宅ローンとして組めるようになってきた、というのはみなさんご存知のところです。
ただ、ローンはあくまで担保を元に借りるもの。リフォームやリノベーションをしても、販売価格がリフォーム代と同じだけ上がる、ということはありえない。なので、銀行にとってリフォーム費用部分は無担保に近い状態なわけです。
で、このあたりは銀行によって対応がかなり変わってきます。一緒にローンを組めるリノベーション費用の上限はどのくらいか、というのが最も大きなところで、ここを見るだけでリノベーションに関してのそれぞれの銀行の取組姿勢が窺い知れます。
その他、ローン申し込み時に必要な書類は何か?というところなど含め、大手三行(三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行)のリノベーションに関する住宅ローンの考え方の違いを、工事業者側からの視点で一覧表にまとめてみました。
三井住友銀行 | 三菱東京UFJ銀行 | みずほ銀行 | |
リノベーション費用と物件価格の割合 | 20%程度 | 100%? | 上限なし |
ローン申込時に必要な工事見積 | 工事項目別の概算でOK | 品番や仕様などの詳細が必要 | 工事項目別の概算でOK |
ローン申込時に必要な図面 | なくてもOK? | リフォーム後の図面が必要 | なくてもOK |
工事費用の分割実行 | 引渡し時一括 | 工事引渡し時一括 | 工事契約時、工事引渡し時分割可能 |
顧客属性の評価 | 普通? | 普通 | 厳しい |
まず、リノベーション費用としていくら借りられるか、ですが、基本的に物件価格の何%か、で決められることが多いです。三井住友銀行は物件価格の20%前後までしか借りられません。物件が2000万円なら、400万円ということです。なのでよほど高い物件買わない限り、リノベーション目的で使うのは難しいです。
ちなみにUFJはおそらく100%程度、みずほに至っては上限なし。みずほでは物件価格を超えるリフォーム費用の事前審査が通った事例がいくつかあります。
次に、ローンの申し込み時に必要な書類を見てみます。物件購入とリノベーションを同時に考えるわけですから、物件購入を決めて、ローンを申し込もう、という段階までは大抵2週間程度しかありません。
で、この申込の際に必要な書類として、見積書とリフォーム完成予想の図面、があるわけですが、この短期間で全面リノベーションのプランを決めて、詳細な見積もりを出す、というのは正直、無理です・・・
銀行側もそれを十分承知しているわけですが、ここでまた違いが。図面無し、各工事項目の概算だけあればいい、というみずほ銀行に対し、三菱東京UFJは詳細な見積もり項目とリフォーム後の図面の提出が必要になります。
プランも決まってないから図面もないし、図面なければ見積もり出るわけないことは分かってて、申し込み段階でプランや詳細項目の提出が必要なのか・・・貸しはするけど、歓迎はしてないよ、という姿勢なのか・・・
これはローンの実行方法にも現れてまして、工事契約時と工事引渡し時でそれぞれローンの分割実行をしてくれるみずほに対し、あくまで工事引渡し時に一括でしか実行してくれないUFJ、という違いがあります。
工事費については契約時と引渡し時に半分ずつ、というのが一般的。全面リノベーションでは工務店さんの工事費が高くなりがちなので、引渡し時にしか実行されないとなると、契約時の支払い分は自己資金で用意する必要があり、使い勝手は非常に悪い・・・
と、大手都市銀行だけみてもリノベーションに関する取り組み方に大きな違いがあることがよく分かります。今のところリノベーションに関してはみずほ銀行の一人勝ちといっていい状態。ただその分、顧客属性の評価は厳しく、勤務年数などはかなり細かく突っ込まれるようです。
もちろん、金利あっての住宅ローンです。それ以外の部分、リノベーション前提での使い勝手、という意味で、あくまで参考として見て頂ければと思います。