C-326 | ハンギングエッグチェア

デザイナー:ナンナ・ディッツェル(1923-2005)
メーカー:ヤマカワラタンジャパン

リビングに吊るだけでリゾート感を出してくれる変わり種の一脚。この事例ではアイアンのパイプに吊っている。別売りのスタンドで吊るすこともできるがスタンドの価格が高いのとかさばるのがネック。

今回ご紹介するのはちょっと変わり種、1959 年にナンナ&ヨルゲン・ディッツェル夫妻がデザインしたハンギングエッグチェア。まさに吊られた卵そのもののハンモックチェアです。

当初はロバートウェングラー社にて製造開始、その後イタリア家具メーカーを経て2014年からデンマークのシカデザイン社が製造販売、日本ではヤマカワラタンジャパンが販売しています。

籐は木の空間にもマッチ。天井から吊るす場合は、梁に引っ掛けたり、金物をビス止めして設置する。

ディッツェル夫妻は夫のヨルゲンが40歳で早逝、その後のナンナ単独での仕事の方が有名。この椅子もナンナ単独でのデザインとして紹介されることも多いです。

ナンナ・ディッツェルは男性の多いデンマーク家具デザイン界のファーストレディとも呼ばれ、その後の女性デザイナー台頭の礎を築いた一人。1923年生まれの彼女は19歳で家具職人養成学校に入学、その後コペンハーゲン美術工芸学校で学び、ここで出会ったヨルゲン・ディッツェルと卒業後に結婚、共同でデザイン事務所を設立することになります。

細い籐で編まれているので見た目よりも繊細で高級感がある。椅子の耐荷重は100kgだがチェーンを掛ける天井下地の強度確保が必要。

デザイナーになる前に、家具職人の修業から入るという姿勢は、この学校の先輩であるハンス・J・ウェグナーやボーエ・モーエンセンとも共通するところ。こういったデザイナーを育成する土壌が整っている点がデンマーク家具の黄金期を支えているといっていいと思います。

金属フレームに付いた輪にチェーンを繋ぐ。チェーンと金物は用意する必要がある。

このハンギングエッグチェア、金属の丸いフレームの他はすべて籐(ラタン)でできています。非常にシンプルな形ですが、吊られた際のバランスや強度の確保などはかなり試行錯誤して作られたのではないかと思わせる絶妙なバランスで成り立っていて、発売から60年以上つくり続けられているのも納得のデザインです。座面高は、チェーンの長さによって自由に変えられます。

家具屋でスタンドタイプに試乗。どうしてもやってしまうこのポーズ。

座ると卵型の籐によって周りの視界を遮られるので、居心地のいい小さな部屋のような感覚。籐がしなるので独特のクッション性があって座り心地もなかなかよいです。座面にクッションを複数使うとさらに快適。

ちなみに籐は、木材が伐採後の再生に50~70年掛かるのに対し、5~10年で再生するそう。早い…。この椅子もインドネシアの籐を使い、現地の工場で作られているそう。細い籐で張られているので、もっさりしたシルエットながら繊細で上品な佇まいも魅力です。なお、樹脂製の籐で編まれたアウトドア仕様もあります。

最近は室内にハンモックを吊るしたいという方が多いですが、そういう方には替わりにこの子を吊るというのはいかがでしょうか。リーズナブルで比較的軽いので、吊る場所だけあれば位置の移動も容易です。当然子どもたちに大人気ですが、わんこやにゃんこも喜んで乗るそう。

実際にクライアントから頂いた写真。自分で飛び乗ってじっとしてるらしい(笑)

座面クッションは置いてあるだけなので掃除も簡単。ステイホーム期間も、リビングやウッドデッキの軒先にこの子が吊ってあるだけで高級リゾートに来た気分を味わえます。工務店のモデルハウスなどにもおすすめの一脚です。