デザイナー:ボーエ・モーエンセン(1958)
メーカー:フレデリシア

今回ご紹介するのは、以前ご紹介したJ39のデザイナーでもあるボーエ・モーエンセンのハイバックチェア、MODEL2254です。フレデリシアというメーカーが製造販売していました。現在は現行品としての製造はされていませんが、ヴィンテージ市場ではよく見かける一脚です。

デザインされた当初の初期仕様は背もたれは籐張りでしたが、その後曲木に変更になっています。籐張りのものはダメージが多い物が多く、おそらく強度確保のため仕様変更されたものと想像します。素材はほとんどがオークですが、マホガニーが使われたレアなものもあります。

モーエンセンはFDB(デンマーク生活協同組合)の家具デザイン責任者として、一般庶民向けにJ39を生み出したことは有名ですが、この2254もJ39と同じく直線的でストイックなデザイン。ただ背もたれのゆったりとしたカーブや、端部の継手をあえて見せつつ外側を丸く削り取ったひじ掛けの断面など、随所に職人の手仕事と色気を感じさせるところはさすが巨匠の名作だと思います。

座面のクッションやヘッドレストの固定には革ベルトと真鍮のフックが使われていて、このあたりは師匠のコーア・クリントの影響が見えます。モーエンセンはこれ以降、革をベルトで固定する構造の椅子を色々デザインしますが、ここには戦争が終わり物資が豊富に手に入るようになったという背景もあります。

もう一つ、この椅子の大きな特徴は背もたれが2段階にリクライニングする点。見えない裏面に仕込まれた金物によって座面もスライドし、非常に安楽性の高い座り心地を実現しています。パッと見にはそういったギミックを感じさせない佇まいに機能性を忍ばせている点が心憎いです。

また背もたれは完全に倒してしまうこともできるため持ち運びもしやすく、裏面の金物のビスを外せば背もたれと座面を簡単に分けて梱包を小さくし、運送コストも抑えることができるメリットもあります。

同じシリーズでオットマンもあるんですが、このセットはリビングでのテレビ鑑賞に持ってこい。脚の面積が大きく床に傷がつきにくいので無垢の床材や畳の部屋にも最適。持ち運びもしやすく座り心地も良くて絵になる一脚、リビングのお父さんの定位置として、またモデルハウスやオープンハウス用のラウンジチェアとして最適な一脚だと思います。