PK1 | ダイニングチェア

デザイナー:ポール・ケアホルム(1955)
メーカー:カールハンセン&サン

↑ステンレスの繊細な脚に籐の座面のみというシンプルな構成。木の空間や障子などの和のテイストにもすんなり馴染む一脚

ポール・ケアホルムデザインのPK1。ステンレスの脚に籐編みの座面の軽やかな一脚で、金属脚に籐や革などの組み合わせはケアホルムデザインの大きな特徴です。

↑座面のみが浮いているかのような軽やかさ。座 ると少ししなることで独特のクッション感がある

1929年に生まれたケアホルムは修業ののち18歳で家具職人の資格を取得。まず家具の作り方から入るあたり、同じく職人修業から始めたウェグナーとの共通点を感じます。その後、ウェグナーやモーエンセンが共に学んだコペンハーゲン美術工芸学校に入学。そのとき教鞭を取っていたのはなんと卒業生だったウェグナー本人で、彼からも高い評価を得たそうです。その後ウェグナーの事務所で数年働いており、彼の影響を強く受けたデザイナーの一人だと思います。

↑ケアホルムが学生時代にデザインした「PK25」。現在もフリッツハンセンで販売中。ちなみにお値段は130 万円!

↑脚部は一枚のスチールに切れ目を入れて曲げることで構成されている。合理的で流れるようなデザ イン

ちなみにケアホルムが学生時代にデザイン、ステンレスの一枚板を溶接することなく折り曲げたフレームとロープだけで構成した椅子『PK25』は今も販売されていて、彼の早熟で非凡な才能の証明といえます。特に合理的な構造と明快なデザイン思想は職人としての知識がベースになっていて、木と金属という違いはあるものの、師匠からの影響をしっかり感じることができます。

↑フレームのステンレスはマットな仕上げで高級感がある。籐を止める端部のディティールもしっかりつくりこまれていて心憎い

↑籐を細かく編み込んだ座面は素朴なのに上品で美しい

で、金属脚の椅子といえばイームズやヤコブセンのものが有名ですが、どうしても樹脂や合板座面の組み合わせが多いので座り心地が冷たく、またクロームスチールのソリッドな印象は杉などの無垢床には少し難易度が高く感じがち。それに引きかえマットなステンレス脚に籐編みのPK1は、磨かれたステンレスヘアラインのキッチンに置かれた素朴な籐のカゴのようで、木の空間に置かれると上品で繊細なシルエットとの相性はとても良いです。

このPK1、現在はカールハンセン&サン社が製造販売していますが、以前はPPモブラー社などが取り扱っていて、北欧家具にはこのように年代ごとにメーカーが変わっているものが多くあります。製造メーカーごとに仕様やデザインが微妙に違ったり、古さの証になったりという歴史がまたマニア心をくすぐる要因の一つとなっています。

ケアホルムの椅子は高価なものが多い中、唯一カールハンセン&サンで出されているPK1はお手頃価格(Yチェアより安い)ですので、木の空間に合わせるダイニングチェアの候補の一つとしてどうでしょうか。

なお籐は乾燥状態で長く放置すると破断しやすくなるので、硬く絞った布などで定期的に拭いて水分を与えてあげるのが長く使うためのコツです。