SERIES 7 | セブンチェア

デザイナー:アルネ・ヤコブセン(1902~1971)
メーカー:フリッツハンセン

↑金属製の脚、合板座面と一体のハート形のような独特の形状の背もたれがセブンチェアの特徴

今回はアルネ・ヤコブセンがデザイン、フリッツハンセン社で製作販売されているセブンチェア。ヤコブセンは建築家としてもデンマークが誇る巨匠。そしてセブンチェアは世界で一番売れたデンマークの椅子と言われています。

1902年に生まれたヤコブセンは、デンマーク王立芸術アカデミーの建築科に進学、卒業後コペンハーゲン市建築課に就職した後、建築家として独立しています。Yチェアで有名なハンス・ウェグナーも彼の事務所でスタッフとして働き、オーフス市庁舎の設計では家具をデザインしています。

↑個人的にダイニングは木のチェア、ワークカウンターなどでセブンチェア、という使い方が好き

成形合板の座面と金属製の脚が特徴の「セブンチェア」ですが、ヤコブセンはチャールズ・イームズの合板製のラウンジチェア「LCM」からデザインを着想したといわれています。LCM は座面と背もたれの合板が別の部材ですが、これを1枚の曲げ合板で構成することを考え、まずは「アントチェア」という、背もたれが蟻のような形状の椅子をデザインしました(1952年)。しかし、シンプルな形状の割に製作難易度が非常に高く、製作機械の導入に多額の費用がかかることが問題でした……。

そこで自分の設計する物件に300脚置くことを条件にフリッツハンセン社を説得、製作に至ったという背景があります。商魂たくましいこういうところ、関西人として共感します(笑)。ただアントチェアは三本脚で不安定だったりといった構造的な問題を解決した一脚として満を持してデザインしたのがセブンチェア。結果的に世界中で大ヒットすることになり、現在でもフリッツハンセン社の代表的な一脚です。

↑合板の樹種だけでもメープルやビーチ、チェリーやパイン、オークにウォルナットetcと幅広い

個人的にも、施設やお店といったところから、クライアントの私物としても一番目にする機会の多い椅子ですが、合板だけのもの、前面のみ生地や革が張られたフロントパディング、全面に張られたフルパディング、ひじ掛け付きやキャスター付きなど、バリエーションの豊富さもこの椅子の特徴。最もシンプルなカラードアッシュ仕様は6万円前後ですが、レザーフルパディングのキャスター付だと30万円と仕様によって金額が大きく変わります。

↑先日購入したチークのセブンチェア。1973年で私の2歳ほど先輩。チークは現行品にない樹種

で、その見た目に反して座り心地は良くて、特に背もたれの合板が適度にしなることで独特の柔軟性がありつつ、背もたれの上辺が肩甲骨あたりを支えてくれます。

↑クライアントのご自宅での遭遇率が高い一脚。こちらはカラードアッシュのホワイト

↑ミナペルホネンの生地を貼ったもの。フロントパディング

↑こちらもミナペルホネン。フルパディング

デンマーク国内ではレザーやファブリックのフルパディングが人気だそうですが、日本では合板のままのものが好まれるようです。ただ座面は合板のままでは冷たいので、フリッツハンセンのスタッフさんお勧めはフロントパディングとのこと。座り心地を確保しつつ背面は木目を活かすことができます。

ダイニングチェアとして使うのもいいですが、個人的には書斎やカウンターなどサブスペースにに置く一脚としておすすめ。金属脚と幾何学的なシルエットが空間にアクセントを与えてくれます。ちなみに我が家ではヴィンテージのチーク材仕様を玄関のベンチとして使用中で、タイル土間にしっくりと馴染んでくれています。