木のマンションリフォーム・リノベーション-マスタープラン一級建築士事務所(大阪/兵庫/西宮/神戸/芦屋/宝塚)

マンションリフォームと廻れる動線


尼崎T邸。家全体をぐるっと廻れる回遊動線のほか、子供室同士にも動線を確保している。

私たちがマンションリノベーションのプランニングにおいて最も重要視していることは動線といってもいいかもしれません。動線とはすなわち人や物が動く『みち』であり、風や光が通ることもあります。そういった全ての通り道を動線と私たちは呼んでいます。

こう書くと、ただでさえ限られた面積なのに、入口や扉を増やすのは無駄だ、と思われる方も多いのですが、小さな家こそ動線、特に廻れる動線が重要だと考えています。廻れる動線を確保することは行き止まりを作らないことであり、小さな空間に奥行きをもたらせてくれるからです。

それに、2階建の一戸建て80平米と、ワンフロアのマンション80平米では階段などが必要ない分、一戸建てよりも面積に余裕があり、動線を確保しやすいはずなんです。逆にいうと、動線を確保しないと一戸建てよりも移動距離が長くなってしまうこともある、ということ。

ここでは動線について、いくつか実例をご紹介しながら私たちのプランニングの基本スタイルをご紹介します。

 

生活動線と家事動線を2本にする

改修前

改修後

大阪堺Y邸。Yさんの奥さんの要望は『なるべくエアコンを使わず風が通るキッチン』でした。風を通すためには住戸の南北の窓を繋げる経路が必要です。排水経路を考えるとキッチンの大幅移動は難しかったため、南北の動線を2本取ることを考えました。

キッチンを廊下側に移動、トイレの向きを変更してユーティリティを設け、来客はじめ、一般の動線は右側の廊下とし、左側に家事用の動線をもう一本追加しました。

ユーティリティには洗濯機、スロップシンク、冷蔵庫を置いてあるので、家事動線の途中で全ての作業ができます。ホビースペース北側の窓とダイニング南側の窓を開け、引戸を全て開放するとキッチンを通る風の通り道ができました。

(左)ユーティリティをキッチン方向にみる。ここの洗濯機や冷蔵庫が納まってしまうので生活感は隠すことができる。
引戸を開けておくことで風の通り道にもなる。

(右)ダイニングからキッチン方向をみる。キッチンの奥に見えるのがユーティリティ。

 

壁式構造での廻れる動線

改修前

改修後

西宮名塩K邸。壁式構造で南側に和室、奥にキッチンという配置。キッチンは窓もなく昼間でも照明が必要な状態。いかにキッチンを明るくしながらダイニングと収納を確保するか、がポイントでした。

幸い和室とキッチンの取り合い壁は木構造で外すことができたので、キッチンの向きと位置を変更して南側に。キッチンがあった場所にウォークインとパントリーを。明るい場所に人、暗い場所に物を置く、という自然な配置に直しました。

ウォークインとパントリーは引戸で仕切られており、小さいながら廻ることのできる動線を確保。来客時などはバックヤードとして機能できるように。ウッドデッキを設けたバルコニーへはゴミの出し入れがスムーズにできます。

 

 

lign=”center”>(左)キッチンからパントリー方向をみる。パントリー天井は換気ダクト配管のため下げてある。

(中)パントリー内部。右手にあるのはパソコンカウンター。排水管を通すため床を上げてある。

(右)ウォークインクローゼットからパントリー方向をみる。双方は引戸で仕切れるように。

 

複数の廻れる動線

改修前

改修後

宝塚I邸。もともとは玄関横には小さな洋室があり、キッチンは閉鎖的な配置の間取りでした。書斎とウォークインクローゼット、対面式キッチンというIさんの要望を普通に叶えると、同じように細切れの空間がたくさんできてしまいます。また東面の窓を書斎その他に何とか活かしたい。

そこで両面が収納になった壁を2列、キッチンを含めて『三』の字に並べ、東面の窓を書斎カウンターとしながらそれぞれ動線を確保しつつ、廊下と平行に玄関からダイニングまで南北に繋がる家事動線も確保しました。

玄関土間は引戸で区切り、ベビーカーを置けるスペースとして、また買い物を冷蔵庫やパントリーまで最短距離で運べる動線にもなります。

  

(左)玄関からユーティリティ方向をみる。引戸を閉めるとベビーカーなども隠せる通路。

(中)ユーティリティ内部。両面に収納を設け、東面の窓には書斎を設置。

(右)書斎からパントリー、ダイニング方向をみる。パントリーは冷蔵庫とゴミ箱、食品ストック置き場であり、キッチンとダイニングに繋がる。

 

家中ぐるぐる廻れる動線

改修前

改修後

尼崎T邸。かなり広い面積の住戸でしたが行き止まりが多く、家事動線が長い上に風通しも悪く、収納量も少ない間取り。そこで水周りを大きく移動して2つのウォークインクローゼットを設け、そこを通路として家全体を廻ることのできる動線を2つ確保しています。

在宅ワーカーである奥さんの仕事場を寝室内に設けて、キッチンとの行き来、また子供室同士も行き来できるようになり、南北、東西の窓が繋がることで風通しも確保できるようにしています。

 

(左)子供室2から子供室1方向。共有の子供用クローゼットを挟んで均等に分けてある。

(中)大人用クローゼットから寝室とキッチン方向。寝室⇔キッチンの通路を確保。

(右)リビングからキッチン奥をみる。右手が寝室への通路、左手が玄関廊下への通路。

 

動線に関しては、物件の状況によって、どうしても閉鎖的になることもあります。また寒さなどを考えると繋げすぎない方がいい場合もあります。ただ、ほとんどのケースで何らかの廻れる動線は確保するようにしています。始めに書いたように、それが家に奥行きをもたらし、日々の生活の快適性を左右するものになるからです。

実際にそこに住むわけではない私たちが、動線の便利さを痛感するのは、見学会のときです。来場者がたくさんになっても、廻れる動線があると人の渋滞が起こらないんです。特に廻れる動線を喜んでくれるのは子供たちで、くるくる廻って遊んでいる姿をよく見かけます。

思えば、田の字間取りを襖や障子で仕切る昔の日本家屋は廻れる動線を自由自在に変化できるフレキシブルな住まいでした。そういう意味では日本人のライフスタイルにも合っているのかもしれません。


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