におの浜の家/伊礼智(2022)

大津の住宅展示場にオープンした伊礼さん設計の谷口工務店モデルハウス「におの浜の家」を特別に見学させて頂きました。同行したのは南草津の家や水無瀬の家を施工してくれた栗東の夏見工務店、夏見さん。総合展示場、私たち設計事務所や工務店にとって、近くて遠いといいますか、まぁ、まず足を踏み入れることのない場所。なんか、緊張します・・・

事前にSNSで写真を色々拝見してましたので情報はバッチリ。私がマイレア邸をイメージしてデザインした小幅板風羽目板に、丸柱に籐を巻いたり、アルテックのゴールデンベルという照明を使ったり、最近の伊礼さんのデザイン、アアルトへの深い愛を感じます(小幅板風羽目板ご採用、毎度ありがとうございます!)。

夏見さんもテンションあがってます。ちなみに腰掛けているのはハンス・ウェグナーのCH25。私も好きな椅子で、モデルハウスoloに一脚入れてもらいました。元々はCH27という籐張りの椅子があったんですが、それが量産用に改良されてできたのがペーパーコード張りのCH25。リビングのお父さんの椅子としておすすめ。

 

籐巻きは今度やってみたい納まりだったのでディティールをチェック。なるほど、籐の継ぎ目で穴開けてそこで固定してるのか・・・

洗面からお風呂。杉板がかなりふんだんに使われてます。床はコルク。

窓に鏡貼りの引戸が壁から出てくるようになってます。鏡が目隠しにもなるわけです。

洗面の横に中庭を望むサンルーム、その奥に室内干しスペース。室内干しは花粉症の方も増えて、もはや皆さん定番の仕様になってきてますね。照明はここもartek。

浴室引戸の納まり。あ、下部の框がトメ加工になってる。これ、ひょっとして・・・と思って急いで伊礼さんにメッセージしたら、やはり、リオタデザインの関本さんのディティールを参考にしたということ。いやはや、こうやって新しいものを取り入れていく柔軟性が伊礼さんの設計力の強さの源泉だなと実感。学ばないと・・・

ちなみに私は、下框を薄くして脱衣側に振って、浴室側はポリカとアルミアングルのみで納めてまして、この水周りをどう考えるかというところは設計者の考え方の違いがいろいろ出て面白いところです。マニアックですが。

建築家の永田昌民さんが好んで使ったので永田格子と呼ばれる建具。伊礼さんの設計にはよく登場します。隙間から光を取りつつ、視線をある程度制御、風も通る建具です。私も一度トライしてみたいと思いつつ、そのままでは芸がないなと、代わりに籐張りの建具を使うことが多いです。

こちら、OMXという全室空調とOMソーラーが一体になった設備を導入してます。開発には武蔵野の家やモデルハウスoloの温湿度測定でもご協力いただいた、東京大学の前先生が関わっておられます。とにかく装置がデカいので、基礎を深く作り、そこを機械室として設置。配管も太いので、コストも含めなかなか設置は大変そうです。

キッチンも結構凝った作り。伊礼さんは納まりの標準化を標榜されてますが、その標準は年々磨きを掛けている印象です。私も標準化という言葉にちょっと甘えているところがあるなと反省。精進したいと思います。

ちょうど今設計中の戸建てで既製品の木製建具を使うので、納まりをチェック。考えてたことが大体合ってることが確認できました。

造園はもちろん、荻野寿也さん。関西の楽しいおっちゃんです。東屋やファイアプレイスのあるチャレンジングな造園。

去年、住宅デザイン学校でご一緒させて頂いた際に飲みながらがっつりお話した際、庭に火が使える場所が欲しいってしきりに言われてましたが、まさにこれがそれなのか。ファイアプレイスのあるお庭。毎日がキャンプというわけですね。

伊礼さんより、モデルハウスでボケる、というミッションが下り、仕方なくおじさん二人頑張りました・・・撮影は谷口工務店んのスタッフさん(笑)伊礼さんに喜んで頂けたようでなにより・・・

こんな素敵な家が総合展示場にあるということ、大手メーカーの家を見に来た方たちにも体感してもらえるというのはとても意義のあることだと思います。はい。

気づいたら2時間も居てしまい、谷口工務店のスタッフさんの仕事をがっつり邪魔してしまいました。勉強させていただきました。見学させていただきありがとうございました!