中古マンション選びのポイント(工法編)

小倉の家。RC壁式工法の団地物件のスケルトン解体後のようす。

これから中古マンションを購入してリノベーションを、とお考えの方のために物件選びのポイントをお伝えしていきます。

今回はマンションの建築工法という面から見ていきます。

鉄筋コンクリート造(RC造)について

まずはじめに、マンションの構造としての鉄筋コンクリート造についておさらい。これ、よく勘違いしているケースがあるんです。

集合住宅の構造としては

・鉄筋コンクリート造(RC造)
・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
・鉄骨造(S造)

がほとんどです。

このうち、鉄骨造(S造)はかなり昔の建物が多く、鉄は火災に弱いため防火被覆としてアスベストが使われていることもあるのでお勧めしません。なので今回は外します。

ポートアイランドの家。タワー型マンションの最初期の建築でSRC構造。かなり大きな梁が住戸内に横たわる。

鉄筋コンクリート造(RC造)は、鉄筋という細い鉄の棒を芯材として、型枠にコンクリートを流し込んで造る工法です。最も一般的なマンションの工法になります。

鉄筋コンクリート造(RC造)鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の違いは、梁や柱の中に鉄骨という大きな鉄の柱が入っているかどうか。

特に高層マンションは構造強度を高めるためにSRC造が多くなり、柱や梁がかなり太くなりますのでプランニングにかなり影響します。

ラーメン工法と壁式工法

ここで最も一般的な鉄筋コンクリート造(RC造)についてさらに分類すると、ラーメン工法と壁式工法の二つに分かれます。

中目黒の家。RCラーメン工法のスケルトン状態。外周の壁と柱、梁のみで構造が成り立っている。

ラーメン工法とは梁と柱で構造を成り立たせる工法になります。普通のマンションはほぼこの工法になります。

あのラーメンは全く関係なくて、ドイツ語で額縁という意味の言葉です。

小倉の家。RC壁式工法のスケルトン状態。外周の壁と内部の壁、床面で構造が成り立っている。

壁式工法は5階建くらいまでの建物に多い工法で、壁と床で構造を成り立たせています。特に団地物件はほとんど壁式工法になります。

不動産情報でラーメンと壁式を見分けるポイントは、建物が何階建なのか、間取りの角に柱があるかどうかである程度判断できます。

それではそれぞれの工法のメリットとデメリットを見ていきましょう。

ラーメン工法のメリット・デメリット

水無瀬の家。ラーメン工法は間取り自由度が高いが、天井の梁が間取りにかなり影響する。

ラーメン工法の最も大きなメリットは住戸内に壁が必要ない点。

外壁やお隣との壁、共用の配管以外は全て撤去できますので、スケルトン状態に解体すれば何もない状態にできます。

つまり間取りの自由度は高いわけですが、逆に言えば壁や天井は全て新しく作らないといけない、ということでもあります。

また柱や梁は太く大きくなるので、住戸の角の出っ張りや天井から下がる梁によるプランへの影響は結構出てきます。

壁式工法のメリット・デメリット

小倉の家。壁式工法のメリットは梁が室内に出ないのですっきりすること。抜けない壁をどう設計に取り込むかがポイント。

壁式工法の一番のメリットはやはり柱や梁がないこと。

住戸角の出っ張りや天井の梁などの凹凸がないため、すっきりとした壁面や天井面をとりやすくなります。

デメリットとしては抜けない壁が出てくることに尽きます。間取りにはかなり制限が掛かることがあると考えてください。

ただ抜けない壁がある分撤去する壁なども少ないケースが多く、解体処理費用はラーメン構造よりも抑えられる傾向があります。

また団地型物件の場合、天井や内部構造壁は躯体をそのまま仕上げにしているケースが多く、そのまま仕上げ面として使えるレベルの場合は下地作成費用が下がります。

それぞれの工法に付随するメリット・デメリット

ここまで単純な工法についての中古マンションを分類してみました。こうやってみてみるとラーメン工法も壁式工法も一長一短あるのでどちらでもいいんじゃないか、と思われるかと思います。

ただ工法と関連する環境といった面をもう少し掘り下げてみると少し見方が変わります。

まず壁式工法は古い団地型物件が多い、ということです。これはつまり、配管などのインフラも古いことを意味していて、上階の配水管が下階の天井裏を通っていたり、竪管が室内に露出していたり、換気扇がプロペラ式の壁付だったりします。古い物件だと断熱材が施工されていないことや、ドアや窓サッシの断熱性や気密性も低く、断熱改修は必須項目になります。

また壁式工法は低層住戸のためエレベーターが無い場合も多いです。1、2階の場合は材料の搬入や解体時の搬出は楽だったりしますが、5階とかになると階段の上り下りだけでも大変で、思わぬコストアップになったりします。

では工法を環境的な傾向も含めてメリット・デメリットを最後にまとめてみます。工法の純粋な要因は緑、それに付随する環境や傾向を青字で表現しています。

ラーメン工法

メリット デメリット
  • 間取りの自由度が高い
  • 天井高は確保しやすい
  • 物件が新しいケースが多い
  • 配管や共用設備などのインフラが新しい
  • エレベーターがあるケースが多い
  • 断熱性、気密性が高いケースが多い
  • 梁や柱がプランに影響
  • 壁や天井の下地作成面積は増えがち
  • 解体処分する部分は多くなる
  • 物件価格は高め
  • 高層物件になりがち

壁式工法

メリット デメリット
  • 凹凸の少ないプランニングや設計がしやすい
  • 解体処分費用は少なめ
  • 壁や天井の下地作成費用が少なくなる場合も
  • 低層なので地面に近い生活ができる
  • 物件が安い
  • 壁が抜けないのでプランの自由度が低い
  • 天井高が確保しにくい
  • 物件が古いケースが多い
  • 配管等が古く工事に費用が掛かる
  • エレベーターがないと搬入コスト増
  • 断熱改修にコストが掛かる

こうやってまとめてみると、工法に付随する環境面の違いが大きいことが分かると思います。もちろん全ての物件に当てはまるわけではなく、あくまで傾向であることをお忘れなく。