マンション玄関ドアの断熱について

住宅で熱が逃げる場所としては、壁よりも窓が大きいのは何となくお分かりかと思います。で、その次に熱損失が大きいのはどこかというと、玄関ドアなんです。ここでは玄関ドアという温熱上の弱点をどう考えるかまとめたいと思います。

中古マンションで一番断熱しにくい場所『玄関ドア』

まず壁と窓と玄関ドアがどれくらい熱を通すのか。熱貫流率という熱の通しやすさを示す数値で比較してみると、表のようになります。

各部材の熱貫流率(W/㎡K)

コンクリート壁150mm 断熱無し  =4.12
コンクリート壁150mm 40mm断熱 =0.7

単板ガラスアルミサッシ    =6.51
上記窓にペアガラス内窓設置   =2.33

玄関スチールドア         =4.65

こうやって数字で見てみると玄関ドアの熱損失がいかに大きいかが分かります。

壁や窓については断熱材を追加したり、内窓を設置することで改善することが数字をみても分かりますが、玄関ドアは二重にしたり、という改修が窓のようにはいかず、共有部分のため交換もむずかしい。

しかも古い物件ではポスト口という大きな穴まで開いていて気密性もほぼゼロに近い。どうしても玄関ドアは熱の逃げ場所になります。

玄関をなるべく小さくする


ポートアイランドの家玄関

熱損失対策としてもっとも簡単で大きな効果があるのが玄関ホールを小さくすること。

一般的なマンションでは玄関ドアは長い廊下とつながっていて、その廊下が居室や水回りにつながります。新築マンションで玄関ドアの断熱性が高かったとしても、出入りのたびに外気が入ってくる玄関はどうしても冷え込みがち。

その玄関を建具などで小さく区画することで、他の部屋を冷やさないようにする、というわけです。

それ以外の対策は目下いろいろ考案中ですが、最近よくやるのが断熱戸を設けて複層化する、という手です。これは別ページにまとめていますのでそちらをご覧ください。

マンション玄関の通風採光と断熱を引戸で考える

玄関ドアの結露について

断熱改修をさせて頂いたOBさんのおうちに伺い、温熱環境について色々と聞き取りをさせて頂いています。どこもスケルトン状態まで解体後、壁は断熱材を張り、窓にはペアガラスの内窓を設置、杉のフローリングに壁は珪藻土コテ塗り、天井は珪藻土壁紙、もしくは杉羽目板を使用しています。

で、基本的には玄関ドアに関しては断熱改修はできてません。ですので、窓は結露を止められても、玄関ドアは結露するだろうと予想していたのですが、今のところ玄関ドアは結露していないOBさんが多いのです・・・冬の寒い日には物理的には結露していないとおかしいんですけどね・・・

おそらく珪藻土や杉といった調湿素材による湿度調整の効果で玄関ドアの結露が抑制されている、ということかと思うんですが、個人的に調湿について少しは期待してますが、それだけで結露を止めてしまえる、というのは難しいんではないかと思っています。

このあたり、定量的な計算ができないところが難しいんですが、玄関ホールを小さく作ることで、玄関ドアからの熱損失をなるべく小さくする。さらに壁を珪藻土塗りなどにすれば玄関ドアの結露も止められる、ということであれば、マンションでの断熱や結露対策はかなり高いレベルで達成できる、といってもいいかもしれません。