↑大阪都島O邸。南側バルコニーに面した窓に設けたハニカム構造・断熱ブラインド。
マンションでの断熱性能の要はやはり『窓』です。ほとんどのマンションがアルミサッシにシングルガラスという、熱損失が非常に高い窓になっているのが現状であるマンション、ほとんどの熱が窓から出入りしてしまっています。壁の断熱を高めても、窓がそのままでは冬の冷え込みや夏の暑さはほとんど変わらない、というのが正直なところです。
基本的に窓には『内窓』設置を基本仕様にしていますが、最近はそれに加え、『断熱ブラインド』を一緒に設置することをお勧めしています。
ここではこの断熱ブラインドとはどういうものなのか、なぜ薦めるのか、事例を交えつつご紹介したいと思います。
ハニカム構造・断熱ブラインドとは?
断熱ブラインドですが、不織布製の二重構造になったブラインドです。写真のように断面に空気層ができるようになっているため、外部からの熱を防ぎ、室内からの熱を逃さないような仕組みになっています。この形状がハニカム(蜂の巣・六角形)形状なわけですね。
(カタログより引用)
マンションの場合、内窓を設けることが窓面の断熱性能向上の第一歩です。とはいえ、コスト的な問題、または賃貸住宅などでは設置が難しい現実があります。そういった場合でもブラインド感覚で設置できるのがこの断熱ブラインドの一つのメリットではあります。
ハニカム断熱ブラインドの断熱性能を数字で見てみる
さて、この断熱ブラインドですが、設置することでどの程度の断熱性能があるのか、数字でみてみたいと思います。ちょっと難しい内容になりますがお付き合いください。
ここでは熱の通りやすさ、伝わりやすさを表す、
熱貫流率 U 【W/㎡K】
という数値で比較してみます。この数値が大きいほど熱を通すことを表していますので、数字が小さいほど断熱性能が高いといえます。
では早速、普通のアルミサッシと、そこにペアガラスの内窓を付けた場合、さらに断熱ブラインドを付けた場合の数値をみてみます。
一般的なアルミサッシ (シングルガラス) |
アルミサッシ(シングルガラス) +樹脂製内窓(ペアガラス) |
アルミサッシ(シングルガラス) +樹脂製内窓(ペアガラス) +断熱ブラインド(38mm) |
6.51 | 2.33 | 1.46 |
100% | 35.7% | 22.4% |
マンションで一般的なガラスが一枚のアルミサッシでは、熱貫流率は6.51という数値になります。 ちなみにマンションのコンクリート壁(断熱材が吹きつけられている最近のもの)の熱貫流率は0.68程度ですので、窓は壁に比べ10倍程度熱を通しやすい、ということが分かります。古い物件ではサッシのガタツキなどで気密性が落ちていることもあるので、実際はもっと低い数値なのかもしれません。
で、そのアルミサッシの内側に樹脂製の内窓(ペアガラス)を設置すると、数値は2.33まで向上、熱損失は35.7%まで減少します。
さらに内側に断熱ブラインドを設置することで、1.46まで向上、熱損失は約5分の1となって、壁に近いような断熱性能を持つようになるわけで、そりゃ暖かくなるわな、という話です。
実際に付けられたOBさんの話を聞くと、特に北側の寝室の窓などの効果は大きく感じられるようで、窓辺がヒヤッとする感じや、窓面から冷気が降りてくる感じがなくなる、という声をよくお聞きします。
そのまま | 断熱ブラインドを付けた場合 | |
普通のアルミサッシ (シングルガラス) |
6.51 | 2.43 |
内窓を設けた場合 (ペアガラス) |
2.33 | 1.46 |
ちなみに、アルミサッシの内側に断熱ブラインドだけ付けた場合も、2.43程度までは下がります。数値的には内窓を設けたのと同じ程度の効果が望めますが、結露防止にはならないことなどデメリットもいくつか存在します(後ほどデメリットのところでご説明します)
私も賃貸の自宅のアルミサッシ(シングルガラス)にブラインドのみ設置してますが、効果は大きいです。窓面付近の冷え込みや、コールドドラフトと呼ばれる冷たい気流などはかなり止まります。ブラインドのスキマから漏れる冷たい風を体感できるほどです。ただし、結露はすごいです(汗)
個人的に使ってみて感じたメリットは、日射の遮蔽でして、上のカタログでは夏で書いてますが、冬でも昼間や夕方の日射が室内に入り込み過ぎてまぶしいときがありますよね。そういうときに半分ほどだけ閉めるだけで、日射熱をかなり遮っているのがよく分かります。
杉床の木の家と合う断熱ブラインド
この断熱ブラインド、私たちがおすすめするのはその性能のほかにも、木の家に似合うから、という理由もあります。
まず、枠の内側で納まるので窓まわりが非常にすっきりする点。また素材の不織布が和紙のような風合いで光もよく通すため、内障子のような雰囲気が杉の床によく合うのです。何よりコストが比較的安価であることも大きな理由。オーダーカーテンに比べれば確実に安いです。
ここでいくつか事例をご紹介しておきます。
↑世田谷T邸。南側の明るい窓面に設けた断熱ブラインドは障子のような雰囲気。
↑三鷹I邸。内窓無しで断熱ブラインドのみ付けた南側窓。やはり結露は発生しているとのこと。
↑芦屋O邸、木製建具で作った内窓とハニカム断熱ブラインドのコンビネーション。
↑明石団地リフォームM邸。窓だらけの渡り廊下は内窓+断熱ブラインドで入念に断熱。
断熱ブラインドのデメリットと設置の注意点
ここまで色々ご紹介してきた断熱ブラインドですが、もちろんデメリットも存在します。何点か挙げてみます。
1)レースカーテンのような使い方はできない
断熱ブラインドは基本的に開けるか閉めるかのどちらかしかできません。例えば人通りの多い共用廊下側の窓で、風は通したいけど視線は遮りたい、という場合には適していません。少し大げさですが、そういった窓だけは断熱ブラインドを付けつつ、室内側にレースのカーテンも付ける、という手もあります。
2)窓枠の見込(奥行き)が必要
内窓を付けるだけでもかなり窓枠は大きくなりますが、断熱ブラインドも付けるとなるとさらに5センチほど窓枠が大きくなります。場合によっては窓枠が壁から10センチ以上出てくることもありますので、間取りに影響することもあります。
3)洗ったりできない
素材は不織布ですので、カーテンのように洗濯機で洗ったり、ということはできません。掃除機などでホコリを吸って頂く形になります。基本、使うのは夜が多いので子供に汚されたり、という危険性は低いとは思いますが、一つの注意点ではあります
(カタログより引用)
4)結露防止にはならない
先ほどの熱貫流率の項でも触れましたが、数値的には内窓を付けるのとほぼ同じ断熱性になりますが、これはあくまで熱の動きを数値で表した場合の話です。
実際はスキマがどうしてもできることや、素材は水蒸気を通してしまう性質のため、冷え込みはある程度防げますが、結露は防げません。むしろ、窓とブラインドの間は温度が下がるために結露は増加する可能性もあります。
もし結露で悩まれている窓の断熱強化を考えられているなら、まずは内窓を設置して、プラスアルファの要素として考える必要があります。
↑神戸須磨O邸。L字の窓に合わせてコーナーに杉柱を入れて内窓・ブラインドを設置。
私たちとしては、基本的に全ての方に内窓と断熱ブラインドはご提案するようにしています。その後、金額が出揃ってから付けるかどうかを一緒に判断する、という形で進めさせて頂くケースが多いです。あくまで付加的な要素が強い断熱ブラインドですが、性能と価格のコストパフォーマンスと、木の家に馴染む風合いを気に入って使い続けています。
事務所には実物のミニチュアサンプルも置いてありますので、打ち合わせの際はお見せしながら詳しくご説明させて頂きます。