長野遠征その1(乾式二重床と木毛セメント版工場見学)

ご報告遅くなりました。twitterではご報告していたのですが、先週金曜、長野県まで行ってきました。私と池ちゃん、丸岡材木のイケメン岡本くんと友人の設計士、合計4人の弾丸日帰りツアーです。午前5時に事務所発、帰ってきたのが夜11時半。どしゃぶりの雨の中、走行距離800キロの長い旅。

 

まず伺ったのは下伊那の竹村工業さん。木毛セメント版を製造販売されている会社さんで、5年ほど前から乾式二重床の開発と販売をされています。竹村さんは自社でJIS規格の床衝撃音測定施設を数棟持たれていて、そのうちの一棟で私たちのために杉の30ミリ厚の床材での遮音試験を行ってくれていました。今回伺ったのはその状況確認、その他もろもろ。

まずは竹村さんの社屋のデカさに圧倒される・・・何でも元々はテレビの製造工場だったところだそう。会議室で現在開発中の脚を見せてもらいました。ゴム硬度、35ってすごい・・・(何のことか分かりませんよね。詳しくは企業秘密・・・)

 

続いて工場敷地内にある試験施設を見せて頂きました。ここ以外にまだ数棟あるらしくて、床スラブ厚も150ミリや200ミリのJIS規格のほか、新築マンションに合わせた300ミリとか、古いマンションを想定した110ミリなんてのもあるそうです。これはかなりマニアック・・・萌えますなぁ・・・

 

 

そして、杉30ミリを張った試験施設を見学させていただく。この杉材は現地調達して頂いたもの。床厚は150ミリだそうで、測定データではΔLL基準で4等級が確保できていました。つまり、LL-45ってことですね。踏み心地や下階での音も聞かせてもらって確認。

 

他にも温熱環境測定用のRC造の小屋が数棟。これ、木毛セメント版を型枠として使い、そのまま仕上げにしてしまう工法の断熱性能の測定を数年間やっているそうです。市販の断熱材で外断熱にしたものや、外部に杉30ミリの外壁を張ったものなどあります。実際にエアコンをつけて電気代の測定などもしているらしい・・・これはすごいです・・・

特に杉の外壁のマンションなんてとても素敵。無塗装で銀灰のいい色に変色してました。こんなマンション、誰か建てませんかね・・・デベロッパーさん。断熱性能は次世代基準クリアできるみたいっすよ・・・

 

その後車で移動。試験棟として建てた実際のRC住宅を見せて頂きました。一部住宅として仕上げられている1棟4戸のハイツのようになっています。こちら木毛セメント版を型枠として使い、外壁は杉30ミリ、それだけで断熱性能を確保しています。

2階には色んな仕様で組んだ乾式二重床があって、その騒音を1階で2階の様子が映るモニターを見ながら聞くことができるようになっています。上で飛び跳ねたり、走ったりしてもらうんですが、ほとんど聞こえない・・・

 

その後もう一件、こちらは実際に人が住まれているハイツも見せてもらいました。ここでもモニターで上階の様子が見れるようになっていて、同じように走りまわったり飛び回ったりしてもらいますが、ほとんど聞こえないレベルまで遮音されているのが体感でよく分かる・・・内装は杉やヒノキが使われていて・・・いや、ほとんどの壁が木だったので使いまくりでしたね・・・贅沢な賃貸住宅・・・(笑)

 

 

その後、木毛セメント版の工場見学。実は私、木毛セメント版って教科書で名前聞いたことしかなくて。木造住宅ではほとんど使われないので・・・ということで見るのも初めての素材の製作工程が見れるということでわくわく。大人の工場見学ですね。そしてこの工場もまたデカイ。何もかもスケールがグレートです・・・

 

木毛セメント版は細かく削った木材繊維とセメントを混ぜ、板状に固めたもので、防火性が高いのが特徴。木材とセメントしか使ってないので化学物質も出ず、木材の力で吸放湿性能もあるという優れもの。比重が高い、つまり重いので遮音材としても優れています。写真が木を削っているところです。こっから先は企業秘密ということで写真がNGでした。

 

固めたものを屋外で乾燥させる施設。一度に1万枚近く乾燥できるそう・・・少しずつ廻るたび、カタッ、と小さな音が鳴る。なんかアナログでいいなぁ。初めて出会う木毛セメント版に妙に人間臭さを感じ、かわいらしく見えてきました・・・

 

その後、工場内で商品サンプルを見せてもらいました。竹村さんところの二重床の特徴は、一般的な二重床と違い、パーティクルボードではなく木毛セメント版を使っているところ。比重が高いため遮音性能がよく、水にも強い。また脚部が根太形状になっているため、上部の板のサイズが大きく、施工性も高くなっています。

問題はコスト。やっぱり一般的な乾式二重床より高い・・・しかし性能はお墨付き。

 

さて、なぜ今頃乾式二重床なんか見に来てるんだ、いつも使ってるんじゃないのか?という声が聞こえてきそうなんですが・・・実はこれには深~いワケがありまして。

簡単にいうと、各社カタログ値の信用性が少し薄いことや、JIS規格の理想と現実の問題がいろいろ見えてきてしまったからなのです。一昨年に行った遮音材開発から、無垢床材の遮音に関してはかなり勉強してきたつもりなんですが、調べれば調べるほど、あれ、なんかおかしくない?という点が見えてきています。

マンション改修を生業とする以上、ここには矛盾を抱えたくない、ということで確実に胸を張って提供できる新しい仕様を色々検討している最中。実は竹村さんとマスタープラン仕様の新しい仕様を開発しようとたくらんでいます。

詳しく書くと長くなるので、おいおいコンテンツとしてしっかり作りこんでいこうと思います。

ということで、長野遠征の続きはまた次回・・・