↑伊丹O邸。南西の角が凸になっている角がひどいカビ。壁紙も剥がれてしまっている。
今住んでいるマンションの相談時に一番多いともいえる悩みが『結露とカビ』です。特に壁紙に結露が発生し、カビが生えて壁紙が剥がれているケースは築20~30年のマンションで多く見かけます。
そもそもマンション設計時の断熱不足によって生じるもののため、住んでいる方にとっては対策のしようがなく、当然ストレスは大きくなります。
もうひとつマンション住まいの方を悩ませるのは窓の結露です。冬の朝は雑巾持って窓の結露拭きから始まる、という方も多いと思います。これも毎日のことですから相当なストレスですし、ひどい場合は窓枠が腐ったり、カーテンにカビが生えたりする場合もあります。
そもそも鉄筋コンクリートのマンションは気密性が高く(スキマが少なく)、断熱性は低いという、結露にとっては好条件の建物です。どんなに綺麗な仕上げにしても、結露とカビ対策ができていないと同じ問題を繰り返します。カビや結露に悩まされない快適な生活を実現するにはどうすればいいのか、実例を見ながら対策を考えてみます。
なぜ結露するのか?
まずは結露が起こるメカニズムを簡単に知っておきましょう。結露とは空気中の水蒸気が冷やされて水になる現象で、冷えたグラスの表面が濡れるのと同じ理屈です。
冬場、室内には水蒸気の発生源がたくさんあります。入浴や煮炊き、加湿器など。またガスファンヒーターは燃焼時に水蒸気が発生しますし、人間からも大量に出ています(子供一人で加湿器一台分です)。水蒸気がたっぷりの暖かい空気が、外気で冷やされた窓や壁に触れることで結露するわけです。
古い木造戸建てなどでは、家全体のスキマが大きく、空気が自然に入れ替わることができますが、マンションはスキマが少ないために空気が入れ替わらず、余計に結露の発生を助長してしまいます。
特に住戸北側は日も当たらず冷えやすく、また寝室になることが多いので水蒸気が常に供給されますので結露がたくさん発生します。
北側でなくても、凸状に出っ張った部分(出隅といいます)などは外気に冷やされやすいため、南側でも結露することもあります。
結露とカビの関係
↑吹田T邸。壁紙の裏にカビがぎっしり・・・
結露を繰り返す環境では、壁などは濡れたままになることが多く、湿度が高い状態が長時間続きます。こういったジメジメした環境を好むのがカビなのです。カビは菌なので空気中を漂っていますので、風や気流があるところでは生えにくいのですが、タンスの裏や壁の隅など空気が動かない場所ではすくすく成長してしまいます。
また壁が結露を繰り返すと、壁紙の接着剤が水で剥がれてしまい、下地と壁紙の間に空間ができます。この空間は空気が動かないため、さらにカビが生えやすくなるという悪循環を招きます。
結露とカビ対策 壁について
↑伊丹O邸。壁と天井の断熱のようす
結露の仕組みで述べたように、湿った空気が冷たい面に触れることで結露します。つまり、冷たい面を作らなければ結露はしにくくなる、ということです。壁面のカビ対策としては、断熱材を入れることで解消できます。断熱材が外気の熱を伝えにくくするため、壁の表面が冷たくなるのを抑えます。
参考リンク→<マンションリフォームと断熱改修>
結露とカビ対策 窓について
↑吹田T邸。全ての窓に樹脂製の内窓を設置。ガラスはペアガラス仕様。
同じく、窓面についても温度を下げない工夫が必要です。つまり窓面の断熱をすればよいわけですが、窓の断熱にはいくつかの種類があります。最近お勧めしているのは樹脂製の内窓を設けて、窓を二重にする方法です。
もしくはガラスを断熱ガラス(ペアガラス・真空ガラス)に交換するなどの方法がありますが、コスト面や管理規約の問題、またガラスの結露は止まってもアルミ枠は結露してしまうという欠点があります。
壁のカビ対策 おまけ
↑漆喰(しっくい)は強アル
カリ性のためカビが生えにくい。
壁のカビ対策には何より断熱が一番ですが、仕上げ材を漆喰などの強アルカリの材料にすることで生えにくい環境にすることも効果的です。ただし、塗り壁だけでカビを完全に防げるか、というと疑問が残ります。あくまで断熱とセットで考える必要があります。
参考リンク→<珪藻土と漆喰>
参考リンク→<リノベーションと塗り壁>
マンションでのカビについては本当に悩まれている方は多いのですが、マンションリフォームの際に断熱にこだわっておられる方は多くないように思います。
家のデザインも重要ですが、断熱などの目に見えない部分こそが住んだ後の快適性に大きく関わってきます。私としては違う部分に掛けるコストを削ってでも、断熱改修をすることをお勧めしています。